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□知りたいのは全部
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……嗚呼、苛々する。

「あはは、かっわいーなあずにゃん」

「もう!!からかうのやめてくださいよ律先輩!!」

……苛々、する。

「……はあぁぁぁ」

皆に気付かれないようにそっと溜め息をつく。

吐いた息と一緒に少しでもこのモヤモヤした気分も吐き出したくて。

梓が律たちにいじられている、いつもの光景。

でも、私はそれを受け入れられない。

今自分が感じている感情がなんなのか分からないほど私も子供じゃない。

……嫉妬、してるんだ。

別に律に非はないし、もちろん梓にも非はない。

梓に至ってはある意味被害者だし。

でも、それでも、やっぱり嫌なものは嫌なんだ。

最近、よくこういう感情を抱く。

梓を始めとして、他の誰でも律と二人で話してるのを見るとどうしても、モヤモヤしてしまう。

自分の器の狭さにビックリだ。

……律は、どうなんだろう。

私が他の人とずっと話しているといじけたりすることがあるけれど、私みたいに小さいことですぐ嫉妬したりするんだろうか。

恋人になってから、自分が思っていたほど律のことを知っている訳じゃないんだって気付いた。

それでも他の人よりかは全然律のことを知っているし、知らない面が見れるのも恋人になったからだってことなんだろうけど。

それでも、律の全部を知りたいって、……律を独り占めしたいって、そう思ってる自分がいる。

「……澪?」

「ん、何?」

いつの間にか梓いじりは一段落したらしく、皆各々お茶を飲んだりしながら雑談していた。

「……ごめんな」

「え」

「あたしが構ってやんなかったから寂しかったんだろ?」

「……なんかその言い方だと小さい子みたいだな」

でも、違わない、そう呟くと、律はそっと私の手を握ってきた。

……律は、ずるい。

私は律のこと全部知らないのに、きっと律は私のこと全部知ってる。

それで、こんなに私が嬉しくなるようなことするんだから。

……律は、ずるい。

でも、大好き。

「律」

「ん?」

「好きだよ」

皆に聞こえない程度の声でそう言うと、律は動揺したのか、私の手を握りしめる強さが変わった。

……少しは仕返しできたかな、なんてね。







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