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□大好き、だから
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未来捏造


喜ぶべきこと、笑顔でいなくちゃならない。

分かっていても、胸が押し潰されそうな感覚に耐えきることができる自信が僕にはなかった。

「、先輩、ご卒業、おめでとうございます」

泣きそうになるのを堪えながら、笑顔で言う。

きっと今の僕の笑顔は歪なんだろうな。

……本当は、今すぐに泣き出したい。

泣きじゃくって、風丸さんにすがり付いて、行っちゃ嫌だって、そう叫びたい。

でも、先輩を困らすようなことをしたくないという思いもあって。

最終的に僕の中で優先されるのは風丸さんのこと。

「……ありがとう」

風丸さんは、ふわりと笑って。

その時に一緒にふわりと髪も揺れた。

……また、胸がぎゅう、ってなって、目頭が熱くなる。

この笑顔を、もう見れなくなるんだな、って。

「……………っ」

あぁ、もう、ダメじゃん。

風丸さんの前では泣かないって、決めてたのに。

一度堰を切ってしまえば、もう止めることなんてできなくて。

僕の目からはぼろぼろと涙が溢れだしていた。

「……宮坂!?」

「っ……すみません、」

「……どうして、泣いて、」

……どうしても耐えきれなくなって風丸さんに抱きつく。

風丸さんは、戸惑いつつも、僕を受け止めてくれた。

それが嬉しくて、切なくて。

とりあえず、風丸さんの胸に顔を埋めた。

そうすれば、風丸さんの香りに包まれた気分になって。

……この香りももう最後なんだなって思って、また新しく涙が溢れた。

「……宮、坂」

「っく、……う、」

何か言わなくちゃ、そう思うのに口を開いて出てくるのは嗚咽だけ。

「……ごめんな」

「…っ」

どうして、謝るんですか。

言葉には出来ないからただ、首を横に振る。

「……ごめん、」

もう一度そう言って、僕を強く抱き締めてきた。

「……、せ、ん…」

「、宮坂、俺っ、宮坂のこと好きだった」

「……!」

突然言われたその言葉に、驚く。

また、涙が溢れてくる。

このままだと涙で身体中の水分を使い果たしてしまうんじゃないかってぐらい、とめどなく涙が出てきた。
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