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□ただ君に夢中
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「おじゃまします」

小声で呟きながら踏み入れた風丸の部屋。

緊張しつつ周りを眺めれば、隣にいる風丸が笑いを堪えているのがわかった。

「……なんだ」

「こんなに緊張してる豪炎寺初めて見た」

本当に可笑しいらしく目の端に涙を溜めてくつくつと笑い声を漏らす風丸に苦笑。

初めて恋人の部屋に来るのに緊張しないはずがないだろうと思ったが、よくよく思い出してみれば風丸は初めて俺の部屋に来ていたとき我が物顔でくつろいでいた。

それにしても、予想はしていたが綺麗に片付いているこの部屋に感嘆の息を漏らす。

「適当に座ってて」

そう一言置いて、風丸はお菓子とか出してくる、と一度部屋を出て行った。

ふぅ、と緊張をときつつ、深呼吸すれば、肺一杯に広がる酸素。

深呼吸の際に吸った空気が風丸の匂いがしたものだからなんとなく満たされた気分になって。

視界の端に写る風丸のベッドにダイブしてみたい、等とも考えたが、流石に引かれそうなので、やめた。

その代わりといってはなんだけど、近くにあったクッションに顔を埋めてみる。

「………なにしてんだ」

そうして風丸の空気を味わっていたら、どことなく冷たい風丸の声が頭上から降り注いだ。

俺はといえば、多分風丸の香りに包まれたのが幸せすぎて頭が上手く働かなかったのだろう。

「、風丸の匂いがしたから」

なんの躊躇いもなく考えていたことを口に出していた。

顔を上げて風丸を見れば顔を真っ赤に染め上げて硬直していて。

あまりの可愛さに一瞬理性が揺らぐのさえ感じた。

とりあえず風丸が持っていたトレーを机に置く。

その時に出たかたんという音で風丸は我に返りいそいそとコップにお茶を出し始めた。

その姿があまりにも可愛らしくて、俺の心臓は心拍数を上げる。

お茶を出し、お菓子も開いて机に置くと、風丸は少し距離を置いた俺の隣に腰を下ろした。

俺は遠くのお菓子を取る振りをして風丸との距離を詰める。
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