メイン1

□その微笑みが
2ページ/3ページ


「……アスラン」

「ん」

「片付け、もう少しだから」

ここで彼を完全に拒絶出来ないのは惚れた弱味ってやつなのだろう。

アスランは自分が僕に振り回されている、なんてことを時々洩らすけれど、振り回されているのは僕の方。

好きだから、それもいいかな、なんてほんの少しでも思ってしまう僕も大概彼に甘い。

渋々ながらも離れたアスランにほっと一息つきつつ、片付けを再開。

酒瓶を完全に回収した頃には机が埋まりかけていた。

「……キラ、終わった?」

疑問系なのに答えを待たずに再び僕の背中に抱き着いてくるアスラン。

時間がたったおかげか、さっきよりも幾分お酒の匂いがマシになった気がする。

「…アスラン」

「何?」

「君、もう酔い醒めてるでしょ」

最初に名前を呼ばれたときに気付いた。

さっきまでのふわふわした声じゃなくって、名前を呼ばれただけで思わずドキリとしてしまうアスランの声。

「ふーん、よく気付いたね」

くすりと笑いながら耳元で囁かれ思わず体が跳ねた。

……前言撤回。

アスランまだちょっと酔ってる。

抱き締められた状態のまま首筋を舐められ思わず出てしまう高い声。

「っ、アスランっ、水、水飲んできなって!!」

「もう酔ってない」

「嘘ばっか!!」

「ほんと」

睨んでやろうと後ろを向いたその瞬間、合わせられた唇同士。

「、ふっ」

舌を差し込まれれば口内にお酒の味が広がった。

そのせいかいつもよりも頭がぼーっとしてしまう。

もちろん、アスランのキスが上手いせいでもあるのだけれど。(むかつく!)

微かに聞こえる水音と、溶けるようなキスの感覚に、僕はアスランにしがみついて耐えるしかなかった。

しばらくして唇が離れ、おずおずと目を開けば、嬉しそうなアスランの顔。

あぁもう。

こんな顔されちゃあ怒るに怒れないじゃないか。

「アスラン、」

「何?」

それでも文句を言ってやろうと話しかけたけど、返ってきたのはこれでもかってぐらいの優しい微笑みで。

「…………バカ、っ///」

それを直視してしまえば否応なしに顔に熱が集まってしまう。

ほんともう、自分がアスランに甘いというか。

なんだかんだで大好きなんだなって再確認させられただけだった。








―――――――――――
Next
→あとがき。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ