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□それなりに動揺してるんだけど
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がたんごとんと揺れる度に首を擽る赤い髪に身を捩りながら溜め息をつく。
ちらりとバーンを見遣れば、私の肩に体重を預けながら気持ち良さそうに寝息をたてている。
全く、バーンの目立つ髪色のせいで(私も人のことは言えないが)唯でさえ人目が集まりやすいというのに。
更に人目が集まりそうな状態になるとはどういうことだ。
そもそもここ――電車の中だ――に居るのもバーンが「乗ってみてぇ」と言ったからであるのに。
それでも時折小さく声を出しながら、すやすやと寝息をたてているバーンが可愛くて、起こすに起こせない。
更には小さな声ではあるが、私の名前がポソリと紡がれたとあれば、嫌でも鼓動が速まってしまう。
「……、」
先程私の名前を紡いだその唇は微かに開かれていて。
ときどき小さく揺れる。
それがなんだか扇情的で、私は、自分の喉が乾くのを感じた。
欲情とはまた違う、いわば好奇心みたいなものだ。
(バーンの唇と私のそれを重ね合わせたら彼はどんな反応を示すだろうか。)
そんな内容が自分の中を駆け巡る。
何を考えているんだ、と、自分を規制しようにもその思考は止まることを知らないように私の脳を支配していって。
ならばせめてこいつから目を離そうと試みるが、自分の意思とは裏腹に視線は惹き付けられるようにバーンの口元へ落とされる。
そうして数分間、心の中で葛藤をした末に、結局好奇心が勝ってしまった。
こんなところで寝こけているバーンが悪いんだ、そう自分に言い訳をしながら、バーンの唇を奪う。
途端に車内がざわついたが、そんなことは想定していたので、無視。
堪えきれなかったのか、「キャーっ」と黄色い声を上げる女子高生がいたのには流石に驚いた、というか、若干羞恥が沸いたが、それも構ってはいられなかった。
唇からバーンの熱が仄かに伝わる感覚が、なんだか思考を曖昧にしているようだ。
暫く唇を合わせるも、バーンの瞳は一向に開かれる気配がない。
私は微かに開かれた隙間から舌をさしこんだ。