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□余裕
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「あ、風丸、部活先行っててくれ」

授業が終了した後。

普段なら部活へ一緒に行くところに豪炎寺のその言葉。

「どうしてだ?」

「……それが、飼育委員のやつに代理で兎の餌やってこいって言われて」

首を傾げてそう問えば、苦笑しながらそう返される。

理由は分かったが、何で豪炎寺にそれを頼んだんだ、という思いがちらりと掠めて。

そして兎に囲まれている豪炎寺の姿を想像してしまい、思わず口を綻ばせる。

「俺も行く!」

兎と戯れる豪炎寺見たさにそう言いえば、豪炎寺は快く了承してくれて。

円堂にその旨を伝えてから二人一緒に飼育小屋に向かった。




―――――――――――

飼育小屋に着けば、沢山の兎が俺達を迎え入れる。

わざわざ普段ここまで来ないから中に踏み入れたのは初めてだ。

しゃがんで近くにいた兎を撫でてみれば、逃げることなく、寧ろ俺に近寄ってきた。

そのふわふわとした感触に心が暖まるのを感じる。

……癒されるなぁ。

俺がほんわかとした気持ちに浸っていると、豪炎寺が小さく笑った。

「……なんだよ」

「いや……あまりに幸せそうな顔してるから」

「だって可愛いだろ?癒されるし」

お前も触ってみろよ、そう言って兎を抱き上げて豪炎寺の腕の中へ渡す。

豪炎寺は一瞬拒否したが、結局兎を抱き留めた。

「意外と逃げないもんだな」

「人慣れしてるんだろ」

「そんなもんか?」

豪炎寺は不思議そうな顔をした。

それから兎の耳をなぞるように撫でる。

……うわ、なんか、想像以上に似合ってる。

絵になる、っていうのもなんか違うと思うけど、なんとなくキラキラしてる、そんな感じ。

目を細めて兎を撫でる姿はサッカーをしているときよりも幾分か幼く見えた。

それでも、優しい微笑みを灯すその表情にドキリとして、見惚れてしまうのもまた事実。

いつもは見られないその姿を見れたことにちょっとした幸福感と優越感を感じながら豪炎寺の隣に座る。

豪炎寺の膝の上に大人しく収まっている兎を撫でながら口を開く。

「豪炎寺って何気に可愛いものとか好きだよなー」

「…そうか?」

「ケータイのストラップとかも可愛いの多いし」

「あれは夕香からのプレゼントだ」

「小動物とか好きそうだし。夕香ちゃんも可愛いよな」

リスとかを肩に乗せる豪炎寺、なかなかいいんじゃないだろうか。
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