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□多分嫌いな訳じゃない
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合わさった唇に、悪寒がした。
「……何よ」
ごしごしと唇を擦る私に、ベルンはただ、唇を合わせる前と同じような微笑みを向ける。
見る人が見ればその笑顔はとても愛しいものへ向けるそれだったのかもしれないが、当の私からしたら、いつものように人をバカにした笑みにしか映らなかった。
よって私は非常に不快そうな顔をしているのはずなのだが、ベルンはそれを気にも留めず、口を開く。
「……好きよ、ラムダ」
「何よ、気持ち悪いわね」
私のそれは決して照れ隠しなどではなく、心の底からの言葉。
(あぁ、気持ち悪い。血液がぞわぞわする)
もっとも、魔女に血が流れているかは定かではないが。
鳥肌のたっている腕を擦りながら彼女の顔を見れば、相も変わらずうすら寒い笑みを浮かべたままで。
そこで私ははたと気付いた。
きっとこれも退屈しのぎのゲームの一種なのだと。
ゲームというよりも只の遊びかしら。
ベルンは私にそういうことを言って反応を楽しんでいるのだ。
ならば、私だってここまで気持ち悪がる必要はない。
「ベルンに恋愛の情があるとは思わなかったわ」
そう、いつものように軽口を叩く。
するとベルンはまた一歩私に近づいてきたから、元から少なかった間の距離が少なくなる。
それこそ、お互いの息遣いを感じられるくらい。
「私も、まさか恋愛感情を感じられる日が来るなんて思わなかったわ」
悪戯っぽく微笑まれ、何故だか頭が少しくらくらした。
決してドキドキは、してないけれど。
「ねぇラムダ」
「何」
「好きよ」
二度目であるはずのそれは、不思議と嫌な気がしなかった。
もう既に遊びだと割りきっているからか。
しかしさっきとはまた違った風に血がざわついていて。
ほんの少しだけ、嬉しい、なんて思っている自分に嫌気がした。
その間に再び唇を重ねられる。
さっきは気持ち悪いとしか思えなかったそれが、ちょっとだけ甘く感じられた。
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