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□見透かされたのは
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「不思議な子だなぁって、思ったんだ」
「……は?」
彼が何を言っているのか判らないのはいつものことだけれど、今日はいつにもまして……というか文脈的にも、意味がわからなかった。
「何、それ。」
またいつもの電波?その言葉は飲み込んだ。
彼は神経図太そうに見えて案外繊細だから。
「最初に会ったときからね、なんか、変だなぁって思ったんだよ」
「だから……何が」
要領を得ないNの言葉に多少苛立ちつつそう言えば、君が、そう返ってきた。
それはまぁ、いいとして。
なぜそこでぼくの頬に触れる必要があるのだろう。
彼がスキンシップの多いのもいつものことだから、わざわざ振り払ったりもしないけれど。
「しっかりしているのに脆そう、というか」
「……もっと分かりやすく話してくれないかな」
「うーん……なんて、言うのかな。そうだね、生きているのに死んでるみたい、そんな感じ?」
その言葉に、ドクリと心臓が波打ったのは、きっとそれが図星だから。
ぼくは動揺を悟られまいと平然を装うが、なぜだろうか、まったく無意味な気がしてならなかった。
「多分、そんなところにね、惹かれたんだと思うんだ」
言いながら擦り寄ってくる彼は、なついたポケモンのようで、なんか少しだけ可愛い……かもしれない。
そんなことを思う自分にため息をついた。
どんなに妥協しようと彼はポケモンほど小柄じゃないし、彼からのスキンシップはポケモンたちがするそれとは全く意味が違うのに。
「……ぼくは、嫌いだよ。あなたのこと、最初から」
「どうして?」
「Nといると、自分自身がわからなくなる」
そう言えば何が面白かったのか、くすりと微笑まれる。
なんだか小馬鹿にされているようで、少し腹がたった。
「そう」
ボクは、好きだけどね、君のそんなところも。
微笑んだまま言われ、頬が紅潮するのがわかった。
ぼくが彼に対して苦手と思うところは、たくさんあるけれど。
一番苦手なのは、そうだな。
きっと、何もかもが見透かされているような気がするとこ。
「……嫌いだよ」
彼に、というよりは自分自身に言い聞かせるようにして呟いたその言葉に、そう、とそれだけ言って微笑んだNは、やっぱり全てを見透かしているのだと、そんな気がした。
2010*10*05
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