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□白熱灯の下の交渉
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最初から敵だと、そのつもりで接してきていたつもりなのに。
気づいたら心惹かれていた。
どんなにあいつは敵なのだと自分に言い聞かせようとも、なんの疑いもないような笑顔を向けられれば、らしくもなく心がざわついた。
そうして相手から求められてしまえば、自分も受け入れざるを得なくなって。
ぎゅ、と自分の持つリングを握りしめる。
結局、あいつは敵なんだ。
考えれば考えるほど胸に何かがつかえるような気分になった。
「紅葉は、いつも何かに耐えているな」
「なんだ急に」
「今も、極限に怖い顔をしていたぞ」
「知るか、触るな」
ぐい、と眉間に寄せられた指を取り払う。
ぱしりと弾き返された手のひらを見て、何故だか了平は微笑んだ。
気色悪いと呟けば、それを気にするどころか、何故か俺を抱き寄せる始末。
引き離そうと思えば引き離せる。
別段了平の方が力が強いというわけではないのだから。
それなのに抵抗する気が起きないのは、結局僕がこいつのことを好きだから。
アーデルハイトに感ずかれたら蹴られでもするかもしれないな。
もしくは踏まれるか。
「どうして貴様はボンゴレなんだ」
「……それこそ急に、なんだ」
「……貴様がボンゴレじゃなかったら、」
敵にはならなかったのに。
ボンゴレじゃなかったら、出会うことすらなかったかもしれないが、それならそれでもいいだろう。
「紅葉は、極限によく分からんな」
「は、そんなのお互い様だろう」
「そうか?俺はわりと分かりやすい方だと思うが」
最初の頃こそ、単純なやつ、と思っていたが、共に居ればいるほど、よく分からなくなっていった。
ただの阿呆かと思えば、意外と他人を見ていたり。
かと思えばまた変なところで鈍かったりするものだから、僕はやたらと振り回されてばっかりで。
「紅葉、」
名前を呼ばれて振り向く。
すると、予想通り落ちてきた口づけ。
諦め半分、それを甘受けすれば、一瞬で離れたそれ。
「……な、今俺がしようとしたこと、分かっただろう?」
「、単純」
そう嘲笑いつつも、それだけでどこか安心してしまう自分もまた、彼と同等ぐらいには単純なのかもしれないと思った。
2010*10*14
タイトルはルネの青に溺れる鳥様より。
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