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□ねがいごと
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「ねぇアスラン、僕達、敵同士じゃなかったら今ごろどうなってたかな」

「?」

キラの仕事部屋、根の詰めすぎで倒れたりしてないかと様子を見に来た俺に、キラはそう言った。

いらっしゃいも何もなく、いきなり。

体の正面を椅子の背もたれに向けて座っているキラを見れば、俺の答えを待っているように上目でこっちを見ていた。

俺にはキラのその質問がいつもの突発的な思い付きであるのかそれとも仕事関係で浮き上がってきたものか測りかねたので、とりあえず、ある程度真面目に返す。

「少なくとも、オーブとプラントが和解することはなかっただろうな。俺がキラたちの方にいたとしても、逆だとしても」

「……だよねー」

ぐだっ、くるくる。

キラの要望により、キラの部屋の椅子は回転のするやつになっている。

二十歳近い男が椅子でぐるぐる回っている様は何処かシュールなものがあるが、なんとなく許せてしまうのはキラの可愛さ故だろう。

キラはぐるんぐるんしながら「そっかー」だの「うーん」だの呟いている。

「……どうしたの?」

その様子から思い付きじゃなさそうだと思った俺は、そうキラに問う。

そうすればキラは一旦回っていた椅子を止めた。

「んー。なんかさぁ。今日の会議みたいなんで戦争止めるにはどうしたらいいかーってなって」

「あー」

それで二度も戦争を止める立役者になったキラに質問が集中したのだろう。

「話し合いで収まるのが一番いいって理屈では分かるけど、実際はそうはいかないでしょ?そんで自分の事考えたら、アスランが敵じゃなかったら……って思って」

静かにそう言ったキラは俺を手招いた。

とりあえず誘われるがまま、キラに近寄れば、キラは少し椅子を動かして俺に抱きつく。

「……気持ち悪い」

「そりゃあんなぐるぐる回ってたら気持ち悪くもなるだろ」

胸板にかかるキラの体重が心地いい。

キラが俺の側にいる、そんな感覚がとても好きだ。

「疲れた、」

ため息を尽きながらそう言うキラの頭を撫でる。

ふわふわとしたキラの髪。

……キラ自身も、この髪と同じように繊細なのだ。

だから、本当は戦争関係の話をさせたりしたくないのだが、ザフトの代表として駆り出される以上仕方ないし、きっとキラも自分の経験を生かしたいと思っているのだろう。

正直、仕事関係で弱音を吐くキラは初めて見た。

キラは嫌なことを自分で溜め込んでしまう癖があるし、負けず嫌いだから逃げ出すのも嫌なのだろう。

「もっと頼ってくれていいんだぞ」

「……ヘタレのくせに何言ってんのさ」

でも、ありがと。そう笑ったキラが、あまりにも弱々しくて、俺は少なからず動揺した。

本当に疲れてるんだな、そう思ったけど、あいにくキラの疲れをとる方法が俺には思い付かない。

こういう時ラクスならどうしているんだろう、なんて、ライバルであるはずのピンク色の少女を思い浮かべてみたり。

「……何か食べたいものとかあるか?」

とりあえず何か欲しいものがあるのならその希望を聞こうと思いそう言うも、キラは別に、そう返してきた。

「食べ物とか、今は要らないかな」

「……そう」

「今は、アスランに近くにいて欲しいんだ」

いつもの声のトーンで言われた言葉に、思わず瞳を瞬かせた。

「そんなことでいいなら、いつまでだって」

笑ってそう言えば、キラは嬉しそうに微笑んだ。










2010*11*28



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