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□今はまだ序章
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四天王が、お互いのテリトリーに入ることは珍しい。

比較的一人が好きな人が多いから。

「ねぇ、お茶でもどう?」

だから、そんな誘いを受けた時、私は酷く驚いたのだ。

「、カトレアさん」

「……何、その顔」

「いえ、カトレアさんがこっちに来るのが珍しかったものですから」

私が誰かと話したくなった時に、私が彼女のところへ行くことはたまにあったのだけど。

私の言葉を聞くと、彼女は少し不機嫌そうに、髪を掻き上げた。

「別に、少し目が覚めてしまっただけよ」

「そうですか」

あまり突っ込んで聞くと、機嫌を損ねて帰ってしまうような気がしたから、私はそう返すだけに留めた。

私はいつからかカトレアさんが好きだった。

そして、彼女との距離を測っているうちに、覚えたのは彼女のご機嫌の取り方で。

それが功を奏したのだろうか。

彼女の方から私に関わろうとしてくれるまでになったのだ。

嬉しく思いながらも、私は至って平然とした顔をした顔で立ち上がる。

「すみません、今紅茶は切らしているので、」

「いいわ」

「へ?」

「……自分で、持って来たの。紅茶も、コーヒーも」

そう言いながら、片手をあげる。

かさりと小さな紙袋が音を立てた。

ありがとうございます、と返して、今度はお湯とカップを用意する。

カトレアさんから、それらを受け取りセットして、あとはお湯が沸くのを待つだけだ。

二人、テーブルを挟んで向かい合って座る。

「でも、わざわざコーヒーの分まで用意しなくてもよかったのに」

「……アナタが適当なものばかり選ぶから」

私はコーヒー派で、カトレアさんは紅茶派。

お互いあまり自分の趣向でないものは買い置きしていないから、普段私はコーヒーを持参していた。

カトレアさんが銘柄に拘るのに対し、私は基本的には飲めればいいという思考。

時たま美味しいものが飲みたくなって、高い物を選んだりもするけれど。

カトレアさんからしたら、それはあまり好ましくないのだろう。

けど、だからといって。

「それで、わざわざ買ったんですか?」

まさかという思いを抱きながらカトレアさんに問いかける。

彼女は事も無げに頷いた。

「そうよ。いい物を調べて買いに行かせたわ」

「……私のために?」

「、っ」

首を傾げて問うてみれば、カトレアさんは言葉に詰まった。

それから、はぁ、とひとつため息を吐いて、私を睨み上げた。


「そうよ……悪くって?」


カトレアさんがそう呟くのと、かちり、と、ポットが音を立てたのは、同時だった。

「あ、沸きましたね」

わざとらしくそう言って、準備をしに向かう。

緩む頬が抑えられない。

後ろを向かないと、私が今どんな表情をしているかばれてしまいそうだった。

お茶を準備して、お菓子を出して、それから。

想いを伝えたら、彼女はどんな顔をするのだろう。

そのわくわくは、本を開く前のそれと似ていた。














2011*04*02




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