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□話の途中ですけれど
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「お前、ちっさいな〜」
なんて失礼な奴だ、と思った。
そのことは俺のコンプレックスであると知っているくせに。
ムカついた気分はそのまま浜野を睨みつけてやる。
殺意すら混ぜたその視線を受けても尚浜野はへらりと笑顔を貼り付けたままだ。
「なに笑ってんだよ、」
ムカつく。
睨むだけじゃ飽き足らず、思わず足を出したい衝動に駆られるが、流石にそれは我慢した。
これでも一軍のFWを任されている身だ。
蹴られたら痛いじゃ済まない可能性も十二分にある。
そんなことを考えてから、また、なんで俺がこいつのためにここまで考えてやらねばならないのだと嫌悪感。
(……そーは言っても)
浜野との関係はただのクラスメイト、チームメイト、それだけじゃない。
親友、も多分まあ間違っちゃいないけど。
残念なことに恋人同士。
付き合っているのは何故かと聞かれれば、嫌いじゃない、というのと。
押しに負けた。これが半分。
いくら大雑把な性格だとはいえ、普通は同性に恋などしたならそれはそっと心の中に秘めておくべきものだろう。
告ったところでどん引かれるのが関の山。
仮に成功したって今度は周りからの心証が良くないことくらい容易に想像できる。
それなのにこいつはなにを思ったのかもしくはなにも考えていないのか、俺に告白、一度は断ったもののその後もしつこくまとわりついて来た。
まとわりついて来たと言っても、元々俺と浜野と速水三人で行動することが多かったからパッと見た感じではなにも変わっていないように見えたことだろう。
スキンシップが増えたというわけでもなかったし。
ただ一つ隙あらば告ってくるようになっただけで。
(……って、)
今はそんなことどうでもいいんだった。
いらないことを思い出して頬に熱が集まりかけたのを首を振って霧散する。
「ムカつく」
「なんで」
「身長寄越せよ」
「そりゃ無理だわ」
無意味な言葉の応酬はもう何度目か。
羨ましいなと思う。
人より高く、なんて欲張ったことは言わないから、せめて普通くらいにならねえかな。
ぐぐ、と思い切り背伸びをする。
それでもまだ、浜野の身長には届かない。
少しでもいいからこの差を縮めたいと思った。
見上げるより、隣に並ぶ方がいい。
限界まで背伸びをすると、無理な体制を強いられた足がふらついた。
ぐらり、揺れた身体はどうにも止めることは出来なくて。
うわ、二人分の声が重なった。
ずんと体に軽い衝撃。
浜野が俺を抱きとめたのだ。
見上げれば苦笑を貼り付けた浜野の顔。
気まずくなって離れようとしたものの、俺を抱きとめたまま浜野の腕は俺にくっついたままだった。
「倉間は、」
このままでいいと能天気な奴の声。
なんでだよ、そういった意味をこめて睨み上げれば、浜野は少し肩を竦めた。
「……だって、この方が抱きしめやすいし」
そう洩らしてから今度は悪戯っぽく笑いかけてきたものだから、文句は喉の奥で詰まって消えた。
2011*07*03