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「……あのさぁ、」

学校の、昼休み。

昨日のことを未だにぐるぐると考えていると、クラスメイトの半田が話し掛けてきた。

後ろには松野……通称マックス。

彼は面倒くさそうに突っ立っている。

眠いなら来なきゃいいのにと思わないでもないが、言っても彼の不機嫌ゲージが上がるだけだから黙っておこう。

「大丈夫?」

「……えーと、何がだ?」

「なんか今日ボーッとしてない?」

勘違いだったらごめんと謝る半田に、いや、と返す。

……実際、ボーッとしていたのだろう。

どんなときでも、考えるのは宮坂と豪炎寺のことで。

思わずため息をつけば、半田は少し狼狽えた。

その姿から、心配してくれていることは嫌でも伝わった。

それと同時に、松野が不機嫌な理由も、理解。

単に半田が俺のことを心配しているのが気にくわないんだろう。

それは、俺だからとかじゃなくて、多分、自分以外の誰かが半田に心配されることが。

松野が半田のことを好きだという話は、この学校では有名だった。

「悪い。大丈夫だ。ただ、ちょっと宮坂とケンカしてな」

「そういや今日は見てないね、あのちびっこ」

「……お前が言うなよ」

ため息混じりに半田が呟く。

松野は怒ったように頬を膨らましながら半田の頭を小突いた。

「いっつ!!なにすんだよ!!」

「言葉の暴力はいけないと思います」

「リアル暴力もいけねぇと思う!!」

叫ぶ半田に対し、松野は楽しそうだ。

……分かりやすいなぁ。

なんであれで半田は気付かないんだろう。

そんなことを思っていると、とにかく、と半田が振り向いた。

「なんか悩みあるなら、相談してくれてもいいから!!」

「役に立つかは分からないけどね」

「そう、役に立つかは分からないけど……ってまたお前は!!確かにそうだけど!!」

「おぉ、ノリツッコミ」

ぎゃいぎゃいと騒ぐ目前の二人に、思わず笑いが洩れた。

半田の一生懸命さも、心に沁みた。

松野が好きになるのも分かる気がするな……いや、好きにはならないけど。

そんなことを考えていると、一瞬、豪炎寺の姿が頭を過った。

……何故だろう。



帰ってから早速、俺は宮坂に話しかけてみた。

「……宮坂」

「なん……」

宮坂は一瞬普通に返事をしかけて、顔を反らす。

「宮坂」

もう一度名前を呼べば、宮坂は複雑そうな表情をしながら立ち去ってしまった。

無理に引き留めることもできずに、その姿を見送る。

「……どうしよ」

一日、ずっと考えて。

至ったのは宮坂が人間に何かされたことがあるんじゃないかということ。

本人から聞いたことはないが、それだったらああまで豪炎寺と俺を引き離そうとするのも理解できる。

それに、随分前のことだが、一度宮坂がズタボロになって帰ってきたことがあった。

それに関しては何を聞いても答えてくれなかったのだが、もしかしたら。

それを訊きたいと思う反面、俺は躊躇いを感じていた。

もしそれが、宮坂のトラウマになっていたりしたら。

……訊いちゃ、いけないんじゃないかと。

「あー……頭痛い」

微かな頭痛を感じて息を吐く。

普段こんなに物を考えることないからな。

(……明日、豪炎寺に会うのに)

わくわくした気持ちは、最早殆んど残っていなかった。

こんな気分で、あいつに会いたくない。

宮坂のこともそうだけど、豪炎寺のことを考えると、ますます胸が痛くなった。












2010*12*11
 

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