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□断じて、
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ぶるり、と身体を震わせる。
降り積もった雪の中。
あぁ、本当なら、家で幼なじみたちと過ごしている筈なのに。
「寒そう、だね」
「寒いよ」
「そう」
唯一温かいのは繋がれた左手だけ。
あまり嬉しくはないけど、ね。
「嫌なら来なければよかったんじゃない?」
「拒否権を奪ったのは君だろう」
「うん。そうだね」
そうしてまた、会話が途切れる。
本当に、何で彼と過ごしているのかが分からない。
というか、何故彼がぼくと過ごしたがったのか、が。
今日の朝早くに連絡を寄越したかと思えば、勝手に待ち合わせ場所と時間を指定されて。
断ろうとしたら「そしたらボクが迎えに行くから、ね」だなんて。
横暴、というか、どうしたって自分の思い通りにさせたがるところなんか、少しだけ幼なじみの双子に似ているなぁだなんて、思った。
全くどうしてぼくの周りにはメンドーな人が多いのだろうか。
「、ね、チェレン」
彼はふと思い出したようにぼくの名前を呼んだ。
視線の先には、イルミネーションが施されている、お店。
なに、と返せばふらふらと視線をさ迷わせながら言葉を紡いだ。
「サンタさんに、さ。何か貰ったりする?」
「……はぁ?」
唐突過ぎるその言葉に、思わず変な声を出してしまう。
サンタさん、って。
こんなに返答に困る質問をされたのは初めてかもしれない。
いや、これがベルたちだったら一笑に伏すところなのだけれど、相手がNというのがなかなか厄介だ。
なんか、サンタを未だに信じていそう、だから。
「……」
「あれ、もしかしてもう信じて、ない?」
くす、と笑いながら言われ、なんとなく安心した。
流石に、そこまで常識がないわけではないらしい。
「へぇ、つまらないなぁ」
「もし信じてたらどうするつもりだったの」
「んー、現実を教えてあげようと」
「、悪趣味」
というか、それになんの意味があるのだろう。
相変わらず読めない人だ。
ぶるり、再び身体が震える。
ホワイトクリスマス、だなんて言えば聞こえはいいけれど、別にクリスマスだろうがなんだろうが雪が降れば寒い。
尤も、ここら辺は冬になれば大抵雪が積もっているのだけど。
「本当に寒いの苦手なんだね」
「だから最初からそう言ってるだろ」
「だったらもっと厚着してくればよかったのに」
「、煩い。誰のせいだと」
「え、ボクのせい?」
本当に驚いたような彼に、嘆息する。
待ち合わせ時刻が早かったから、急いで出てきたというのに。
そんなことを考えていると、ふわりと、首元に何かが触れた。
見れば、Nが自分のマフラーをずらしてぼくにも掛けてくれているようだった。
「長いから、半分貸してあげるよ」
「全部貸してはくれないんだね。……ていうか、身長差考えなよ」
腹立たしいことに、Nは結構ぼくよりも身長が高かった。
それなのに同じマフラーを共有しようだなんて、少し辛いんじゃないかな。
だけれど、Nは気にならないようで、笑いながらそうかなぁと呟く。
「いいじゃない。恋人っぽくて、ねぇ」
「……同意、求められても困るんだけど」
「暖かいでしょ?」
「……ん、」
子供みたいに、嬉しそうな笑顔を向けられて。
なんだかその表情に弱いぼくは、思わず頷いてしまった。
なんだか身体が暑くなってきたのは、そう。
マフラーのお陰なのであって、決して、照れているわけでは、ない。
(……チェレン、顔赤いよ)
(近付きすぎで暑いんだって、)
2010*12*25
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