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□どきりというよりぞくりとした
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※学パロ



「……キラ、校則違反」

アスランは冷酷にそう呟いて、手元のメモ帳にペンを走らせた。

「うわ、待ってよアスラン!」

「何?言い訳なら御遠慮願えますか、生徒会長」

生徒会長、その言葉を嫌みったらしくゆっくり言って、それからこつんと軽いげんこつが降ってくる。

痛かったわけではないけれど、そこをさすりながら、アスランを睨み上げる。

「酷いよアスラン、少しぐらい大目に見てくれたっていいじゃないか……!!」

「少し?その第二ボタンぐらいまで下げられたゆるゆるなネクタイを少しとは言わないよ」

言いながらぐいとネクタイを締め直される。

首元が苦しかったから、またネクタイを弛めようとしたら、再びアスランに小突かれた。

アスランは溜め息混じりに言う。

「まったく、わざわざ朝キラのネクタイをちゃんとさせたのはなんのためだと思ってたわけ?」

「だって、僕の服装検査いつもアスランがしてくれるじゃん」

「だから?」

「……アスランなら、見逃してくれるかなぁって」

流石にばつが悪くなって目を反らしながらそう言うと、アスランがあのねぇ、と苛立ち混じりに口を開いた。

しまった。

もしかしたらお説教モードのスイッチ、押しちゃったかもしんない。

「いい?俺は風紀委員長な訳ですよ。そりゃあ可愛いキラの名前の横に、マイナス1、なんて書くの気が引けるけど、そんな私情で動くわけにはいかないわけ」

「……ん」

「だから、朝ちゃんと直してあげて、なおかつ服装検査あるよって言ってやってんのに、どうしてキラは着崩して学校来るわけ?」

だって苦しかったんだもん、なんて口に出せるはずもなく。

ごめん、と小さく呟くが、アスランはそれを聞いているのかいないのか、話す口を止めようとしていない。

「大体さ、キラは生徒会長なんだから、もう少しその自覚を持つべきなんだ。キラがそうやって着崩してると他の生徒も別にいいのかなだなんて思い始めるんだよね」

それでまた服装検査の頻度が上がるし、いい迷惑だよ。

そこまで一息に言って、腕を組むアスラン。

僕はといえば、よくそんなに喋れるなぁだなんて少し驚いてしまう。

そんな僕の様子に気付いたのか、アスランは不快そうに眉根を寄せて。

聞いてるの?そう問いかけてきたから聞いてるよ、そう返した。

「じゃあ、次からはちゃんとする?」

「……出来れば」

「それ、出来ないって意味だよね」

流石はアスラン。

伊達に十数年、僕と付き合っている訳じゃない。

本当にさ、口うるさくて生真面目なのは昔っから変わらないよね、アスランって。

ある意味風紀委員長の肩書きがぴったりだよ。

「次からはちゃんとします」

そんなつもりは全くなかったのだけれど、これで納得してくれるなら、とアスランの目を見ながらそう言う。

アスランは暫く苦々しい表情をしていたが、少したつと朧気に口を開いた。

あぁよかった、これで解放される。

そう思ったのも束の間、アスランの口から出てきたのは信じられない言葉だった。

「じゃあ、次からはちゃんとしてなかったらその場でキスね」

「はぁ!?何言ってんのさ!!」

「やっぱり、ちゃんとしてくるつもりなかったんじゃないか」

しれっとそう言うアスランに、僕は声を荒げる。

「やめてよね、こんな公衆の面前でキスなんかしたら別れるから!!」

「そんなの、キラがちゃんと服着てくればいいだけの話だろ?」

にやりと笑ってそう言われ、思わず言葉に詰まる。

確かにその通りなんだけど、さ。

「……まぁ、俺たちの関係みんなが知ってるし、驚かれもしないだろうけど」

アスランが言った通り、この学校では僕とアスランが付き合っているというのは周知の事実だった。

別に隠すつもりもなかったけれど、広めるつもりもなかったその事は、何処からか噂となって学校を騒然とさせた。

そして決め手は、学校の壁新聞。

僕たちの噂を追及していた新聞部が、僕たちが裏庭でキスしているところを激写、大々的な見出しをつけて貼り出したのだ。

今思い出しても死にたくなる。

自分で自分のキスシーンを見ることは、とてつもない羞恥だった。

そんな記憶を一気に思い起こしてしまい、僕は冷や汗をかく。

もう二度と、あんな思いは御免だ。

「今後は絶対着崩さない……!!」

「そう。残念。あ、ちなみに、服装検査以外の時でもそれは適用するから」

「はぁ!?なんだよそれ!!」

そんなの無理に決まってるじゃないか。

流石にこれは冗談だろうとアスランを見るが、どうしようか。

楽しそうに笑顔を浮かべる彼は、絶対本気で、これを言っているに違いなかった。












2010*12*29


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