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□君の世界は残酷で美しい
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くつくつと愉快そうにに笑う彼は、さながら少女のようだった。

残念なのは、彼の視線の先に無惨な虫の死体があったこと。

まぁ、俺にもそれを見て可哀想だと思う心はないけれど、しかしここまで笑ってのけるのには流石に趣味わりぃと思わざるを得ない。

「……それ見て楽しいか?」

「うん。なんで?」

何の躊躇いもなくあっさりと頷いた彼に、嘆息。

どうしてこうまでひねくれているのだろう、こいつは。

「ねぇ、エスカバ、」

「なんだよ」

「こういうの見てると落ち着かない?」

ふふ、と笑いながらそう言ったミストレの目は、決して笑ってはいなかった。

引き込まれそうな暗い瞳にぞくりとするが、同時にどきりともしてしまう。

何処か危うい、例えば、少し触れたなら崩れてしまいそうな。

そんな風な雰囲気を醸し出す彼が、何故だろうか、俺は堪らなく好きだった。

結局は俺にもあったのだろう。

陰に惹かれるという心が。

ぐい、と彼を、引き寄せる。

驚いたのか二、三度瞳を瞬かせたミストレのそこには、さっきのような暗さはない。

きょとんとした彼の顔がなんだかとても面白くて、思わず吹き出してしまった。

「ちょ、なんなんだよ」

「だってお前……はは」

「意味わかんねぇ!!くっそ、離せ!!」

暴れ始めるミストレの身体を更に強く抱き締めて。

触れるだけのキスをした。

そうすれば、途端大人しくなるミストレ。

いや、動けなくなったと言う方が正しいのか。

暫しの間フリーズしていたミストレだが、数秒経って何が起きたのか理解したのだろう。

白い顔を真っ赤に染めた。

「、な、おま、なにして」

「……お前、意外と可愛いとこ」

「うっせ!!死ね!!バーカバーカ!!」

「いっ、」

照れ隠しにしても酷すぎる暴言を吐いたかと思えば回し蹴られた。

いくら女寄りの顔をしていて華奢だとはいえ、彼も俺と同じ軍人だ。

容赦なく蹴られれば、それなりの痛みは受けるわけで。

その場にうずくまれば、はっ、という嘲笑が上から降ってきた。

「ざまぁみやがれ変なことしてくるからだ!!」

「おっまえなぁ……」

痛みに耐える俺を見てけらけらと笑う彼は、やっぱり何処かおかしいのかもしれないと思った。

それでも彼が好きな俺は、もしかするともっとおかしいのかもしれないけれど。














タイトルは虚言症様から。


2011*01*02
 

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