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□最期は君と果てる
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簡単に言ってしまえば、魔がさした、ただ、それだけ。

小さく寝息をたてながら無防備に寝ているアスランを見て、何とはなしに首に手を伸ばしてみた。

白い喉に触れると、一瞬ひくりと動いたけれど、アスランが目を覚ます気配はない。

どくり、自分の中で何処かが音をたてた。

出来るだけベッドを揺らさないように身体を起こす。

するりと近付いて、今度は両手を、アスランの喉にかけた。

少しだけ力を込める。

アスランは苦し気に眉根を寄せて。

更に僕が力を込めれば、やっとうっすら目を開いた。

ゆるりと上がってきたアスランの右手が、僕の左手を掴む。

僕が首元から手を離せば、アスランは僕を咎めるでもなく。

「……何してたの?」

「もし、君を殺したらどうなるかなって」

言いながら小さく笑えば、アスランは怪訝そうな顔をした。

どうせ、またおかしなことを言ってるなだとか思われているんだろう。

別にそれでも構わなかった。

自分でも、おかしなことをしていると思うから。

「一緒に死ねたら、幸せだろうね」

そう言えば、アスランは少し困ったような呆れたような顔をして。

「一緒に生きるのが幸せ、だろ」

それも、そうなのだけれど。

なんとも言えない気分になって、アスランを見つめる。

彼をじっと見たところで、何が判るわけでもないのだけれど。

数秒そうしていれば、急にアスランが僕を引き寄せた。

アスランは寝転がったままだったから、そうされると、僕も再び寝転がる形になる。

さっきよりも幾分か近い距離で二人並んで寝転がり、視線は絡み合ったまま。

静寂を破ったのは、アスランの方だった。

蕩けるような甘い声で、キラ、と僕の名前を呼んだ。

「愛してるよ」

抱き締めてそう言われて、胸の辺りがこそばゆくなる。

寝起きのせいか、普段よりも甘ったるく感じるその声に、痺れてしまいそうになった。

「まだ、キラとこうしてたいから、死にたくは、ないかなぁ」

妙に間延びした声でそう言ってから、やんわりとしたキスが落ちてくる。

二、三度触れ合ってから、舌を差し込まれる。

口腔を掻き回されるが、しかし、それはいつものような激しいものではなくて、もっと甘い、ゆっくりと融かしていくような、ものだった。

「、んぅ」

淡い水音が鼓膜を震わす。

そこからじんと、脳みそまでが痺れていくようだった。

「ふぅ、あ、すら」

「、ん」

少しの息継ぎの間に名前を呼べば、離される唇。

アスランは僕を抱き締めたまま、髪の毛を撫でる。

「アスラン?」

「うん」

「……何が楽しいの?」

髪を撫でるアスランの顔には、柔らかな微笑みが浮かべられていて。

綻んだ口許は、息を吸う度に小さく動く。

何故だか上機嫌なアスランに問いかければ、だってさ、と呟いた。

「殺したいぐらい愛されてるんだと思ったら、なんだか嬉しくて」

その言葉は嫌味ではなくて、事実なんだろう。

我が恋人ながら、なかなかおかしな思考回路だ。

人のこと、言えないけど。

「うん。好きだよ、アスラン。殺したいぐらい、じゃなくて一緒に死にたいぐらい、だけど」

「なんだそれ」

どっちの方がいいのかよく分からないな、と、アスランは笑いながら言った。


(ねぇ、いつか僕と一緒に死んでくれる?)
(当たり前。死ぬときは一緒だ)













タイトルは虚言症様から。


2011*01*05
 

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