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□そして再び合わさる唇
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ザフトに入らないか、そうキラから持ちかけられたときは、思わず耳を疑った。
「……俺が?」
「君以外にいないでしょ」
あっさりとキラにそう言われ、かたりと椅子に座り直す。
それは、そうなんだが。
頭を悩ませる俺に、キラは唇を尖らせた。
「……嫌なの?」
問い掛けているようで実質非難しているその言葉に、俺は唸りながら頭を振る。
嫌なんて事は決してない。
しかし、躊躇いを感じるのもまた事実だ。
そんな俺に、キラは追い討ちを掛けるように、俺の手を握って言った。
「お願いアスラン!やってよ、隊長!」
涙目(演技なんだろうな、きっと)で見上げてくるキラに、少々くらりと来たものの。
隊長、その一文字に、踏みとどまる。
「……隊長?」
「うん」
「……白服?」
「うん。……あ、やっぱり赤がよかった?」
やっぱりもなにも、赤服への拘りなんてないのだが。
しかし、どうして俺が白服なんて。
「ていうか、そんな簡単に俺がザフト入れるわけないだろ」
これでも、二度もザフトから寝返った身だ。
悪いことをしたつもりは毛頭ないし、後悔しているわけでもないけれど、流石に軍の方が、そう簡単に俺を受け入れてくれるとは思わない。
だがキラは、平然とした顔を崩さずに、大丈夫だよ、だなんてさらりと言ってのけた。
「どっからくるんだその自信は」
「だって僕、白服と赤服のみんなに聞いてみたけど、別にいいってさ」
キラは何でもないことのようにそう言うが。
それは到底信じられる言葉ではなかった。
それが表情にも出ていたのであろう。
キラは俺を見て、ひとつ苦笑を落とすと、口を開いた。
「意外とね、みんなアスランの事評価してるんだよ。元が真面目なせいもあると思うけど」
「……」
「みんな、そりゃあ君がこっち来たすぐの時は憤ってたみたいだし、今もまだ苦い顔をする人だっていた。……だけどさ、君がしたことは、結果的にいい方に作用したわけでしょ?」
キラが同意を求めるように俺を見据える。
その意図は読めなかったけれど、俺は頷いた。
キラは微笑むと、言葉を続けた。
今度は少し、躊躇うように。
「……それに、ね。これは僕の我儘だけど」
「?」
「一緒にいたいんだ」
誰と、なんて聞くまでもないことだった。
俺はその、予想外のキラの言葉に、少しだけ頬が熱くなるのを感じる。
キラを見れば、きっと俺以上に、真っ赤になっていた。
恥ずかしがりやの癖に、妙に大胆なのは、今に始まった事じゃないけれど。
それでも毎回毎回嬉しくて堪らなくて、気付いたら俺は、立ち上がってキラを抱き締めていた。
「……ありがと」
「なんでお礼言うのさ」
別にそんな事してない、そう言って顔を反らすキラが可愛くて仕方なくて。
「……キスしていい?」
そう訊けば、真っ赤になりながらも笑われた。
「なにっ、それ……今さらっ、はは」
キスの許可を求めるのの何がそんなに面白かったのか。
笑い続けるキラに、そういう事なら、と今度はなにも言わずに口付ける。
キラは一瞬戸惑いを浮かべたものの、それを甘受けした。
唇を離して、俺はキラに言う。
「……嬉しい」
「、」
「俺も、キラと一緒にいたい。ずっとね」
「……それも、今更、だね」
キラはそう言ってはにかむと、再び瞳を閉じた。
2011*01*13