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□そのくらいは分かるのです
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可愛らしい色をしたそれは、彼の手のひらの上で遊ばれていた。
いちごみるく。
飲み物ではなく飴の方の。
なんだか半田にそれが似つかわしくなかったから、半田っぽくないねと正直に言って笑ってやれば、ムッとした顔をされた。
尖った唇がちょっと可愛い……なんて、絶対言ってやらないけどね。
「それ、どうしたの」
「貰った」
「誰から?」
「女子」
「……ふーん」
正直ちょっと、むかついた。
女子に貰っただけの飴を、半田が大事に持っていたのが気にくわなかったのだ。
もちろん半田の方がそんなつもりではないことぐらい分かっているし、だからこそ、僕はそれを極力悟られないような反応をしたつもりだったのだけれど。
半田は少し、呆れたように、くすりと密やかに苦笑した。
「そんくらいいいじゃん」
そう言って軽やかに笑う彼は、僕の想いを分かりきってはいないのだ。
そりゃあ、そりゃあね。
半田がモテるだなんて、そんなこと思ってもいないけど。
だからといって、僕みたいな物好きが、他にいないとも限らないし。
もちろんそんな人がいたとしたって、半田を渡すつもりはこれっぽっちもないけれど、もしも物凄い可愛い女の子に言い寄られたりしたら、半田ならぐらついてしまうかもしれない。
「そんくらいってね、もしそれが好意の表れだったらどうすんのさ」
からかうようにそう言ってみれば、半田はぱちくりと目を瞬かせた。
それから、耐えきれずに吹き出した。
「いや、ないだろそれは」
あっさりと一笑に伏した半田に、僕はひたすら驚くばかり。
自分がモテないこと、こんな風に受け入れていることはなかったはずだ。
僕がそんな顔をしているのに気が付いたのか、半田はさらに言葉を重ねた。
「……今更、女子から好意寄せられたって嬉しくねーよ」
多分に頬を紅潮させながら言われたその言葉。
色々抜けてはいるものの、それはつまり、僕がいればそれで十分だと言うことでほぼ間違いはないのだろう。
嬉しいと、単純にそう思った。
「半田、」
「っ」
場所は、僕の家。
二人きりなのをいいことに、半田の身体を引き寄せた。
半田は顔を真っ赤にさせて身を捩る。
とはいえ、本気で逃げようとしている訳ではないようで、僕の腕の中で体制を変えるだけに留まった。
僕は半田の手の中から包みにくるまれた飴を取り上げる。
半田のあ、という声と、軽く放り投げられた飴が転がる音がしたのはほぼ同時だった。
「飴なんかより、いいものあげるよ」
そう言って僕は微笑んで。
彼がことを理解する前に、唇を合わせた。
くちゅりと舌を絡ませ合うのも、すっかり手慣れた動作のそれで。
「……は、」
けれども半田の方が、不意打ちだったためか、やたらと苦しそうなので唇を話した。
触れた箇所を擦りながら少し涙目で睨み上げてくる様は、なんとなくエロい。
「急に何すんだよ馬鹿、」
「飴より甘かったでしょ?」
にこりと笑ってそう言うも、気色悪いと一喝されてしまった。
それだって、ただの照れ隠しなのは分かっているから。
今度は彼の心の準備が出来る暇を十分に与えてから、もう一度唇を寄せた。
2011*01*19