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□収まれこの熱
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最初に不思議に思ったのは、庵さんの料理の品数。
「………ちょっと、多くないですか?」
いつもの倍ぐらいありそうなそれを見てそう言えば、庵さんは苦笑して。
「いや、なんかせっかく材料色々あるからって思ったら、つい」
「ふーん。何でそんなに」
「なんか家の前に色々入ったスーパーの袋が置いてあって」
いや、勝手に拾ってっちゃダメでしょう!!
今口に水を含んでさえいなければ間違いなくそう叫んでいた。
「でさ、なんか中に『下僕へ』って書かれた封筒入ってたんだけど」
しかも俺宛!!
今度こそ水を吹き出しそうになるのを寸での所で堪える。
なんとか水を喉の奥に流し込み、息を吐く。
つーかガブリエラ、何でうち知ってんだよ。
マフィアにかかれば俺んちなんて簡単に調べられるってか?
「俺は心当たりないからお前のだろ」
「俺が下僕と呼ばれるのに何の疑問も持たない庵さんにビックリです」
とはいえ、実際俺宛だから仕方がない。
とりあえず差し出された封筒を受け取り、中身を確認する。
『下僕へ
そんな貧弱な体じゃいつ倒れるか分かったもんじゃないから、ちゃんと食っとけ』
そんなことを書かれた紙。
貧弱、って。
すごく余計なお世話だ。
まぁ一応心配してくれているのかもしれない。
言い方がアレなのはガブリエラの性格上仕方のないことだし。
そして、そのメモの後ろに写真も入っていた。
猫を抱いた、ガブリエラの。
「……え、あー、くそ」
ガブリエラ単体の写真だったら、持っとくの恥ずかしいし、まるで自分が下僕だと認めたみたいで嫌だから、まず間違いなく捨てていただろうが、こんな愛らしい猫が一緒に写っていたら捨てるもんも捨てられない。
というか、それが分かっててやっているのだろう。
悪質だ、凄く悪質だ、ちくしょう猫可愛いなぁ。
そんなことを思っていると何を勘違いしたのか庵さんはにやにやと俺を見てきた。
「……彼女か?」
「自分のことを下僕と呼ぶ人を彼女にするのってあなた的にはありですか」
しかも写真見てるのはあくまで猫が可愛いからであって、ガブリエラなんか関係ないんだ。
どっちにしろ彼女という表現はかなり合わないと思うけど。
……それにしても、これどうしようか。
猫写ってるし、仕方ないから持っとくしかないよな……うん。
この日の俺は、まさかこれがその後も続くだなんて思いもしなかった。