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□神は私に微笑んだ
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彼は本当に変な男だと思う。
私達が彼と一緒に練習するようになってから二日目。
一日目はまだ様子を見るという風だった彼が急に私に近付いてくるようになった。
近付いてくる、というよりも、無駄に触れてくる、気がする。
それを気のせいだと割りきれないのは、彼が休憩中に発した言葉ゆえ。
「僕、涼野のこと、好きになったみたいだ」
それが友愛の意であったらまだよかった。
しかし、彼はご丁寧に付け加えてくれたのだ。
「もちろんLOVEって意味でね」
にっこりと微笑みつきでそう言われ私はいよいよ彼が分からなくなった。
そのまた翌日。
とりあえず私はアフロディに極力近付かないようにした。
そうすれば必然的に話し相手は南雲になるわけだが、今までそれなりに共に過ごしたことも手伝いさほど苦痛ではなかった。
ただ、南雲と話しているときにチラチラとアフロディと視線が合ってしまったのには腹立ったが。
「……涼野?」
「何?」
「……いや、何でそんなにアフロディのこと気にしているのかと、」
「はぁ?」
「っ、いや、なんでも」
あぁ、なんなんだ、一体。
私がアフロディのことを気にしている、だなんて。
そんなことあるはずがないじゃないか。
目が合うのはあくまでも向こうがこっちを見るからで。
もし私が彼を見ているとすればあの嫌でも視界にちらつく明るい色のせいだろう。
……などと言い訳じみたことを脳髄に浮かべてみるも、本当は、誰よりも自分自身が気付いていた。
ゆっくりと、じわじわと侵食するように。
私は彼に惹かれている。
視界に入れまいとしていても本当は。
心の底から彼の笑顔を渇望している。
(……バカか)
何が、かはわからない。
それでもなんとなく、ものすごく、アホらしいと思った。
「……涼野」
「…………?!」
そんな風に考え事に気が向いていたせいだろう、気が付いたら、アフロディが私の真後ろにいた。
呆然としている私をよそに、アフロディは、私の手を掴む。
「南雲。ちょっとお借りするよ」
「おぉ。…頑張れよ?」
南雲が返した言葉の前半部分は私の手を引いているやつに向けて。
後半部分は私に向けて。
……頑張れよって、何をだ。