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□君といれば怖さなんて
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守りたい、なんて幼稚な考えを持っていた時期はもう過ぎた。
それでも、さ。
澪が頼ってくれるのが、凄く嬉しくて、凄く好きな私がいるのも確かなんだ。
「……りつぅー」
小さく体を震わせながらそろそろと動く澪。
私と澪の掌はしっかりと繋がっている。
「大丈夫だって……。全部作り物、なんだからさ。てゆーかそんな歩き方してるから余計にうぉぉおおっっ!?」
「ひぃっ」
あぁ、もう、せっかく頑張ってかっこいいとこ見せようとしてんのに邪魔すんじゃねーよ。
そう思っていきなり目の前に現れた人影の足をおもっきし踏んでやる。
そいつは一瞬声をあげかけたけど寸でのところで堪えていた。
「律、もう帰ろうぜ……」
「帰ろうったってゴールまで出る場所ないだろ」
「どっかにあるだろ非常口的なの」
「勝手に使ったら怒られるって」
「そこをなんとか……!!」
「無茶ゆーなよ」
呆れて思わず苦笑すれば、律のバカ、澪はそう返して来た。
私がバカ呼ばわりされる筋合いは全くないってのに。
文句言うなら唯とムギに言えって。
そもそもの始まりは昨日ムギが部活中にひらりと取り出した、遊園地のチケット。
『貰ったんだけど、両親は使わないし。よかったらどう?』
狙ったように五枚あるそれを片手に微笑んだムギに私たちはおもいっきり食い付いた。
そんなこんなで今日、土曜日、軽音部全員で遊園地に行くことに相成ったのである。
まぁ、最初の方は当然ベターにジェットコースターに乗ったり、唯と澪の希望でメリーゴーランドに乗ったりしていたのだけれど。
お昼まであと半時間、いい時間潰しを探していた私たちの目の前に入ってきたそれ、お化け屋敷。
おどろおどろしい外装のそこに澪は肩をびくつかせたけれど、その時点では虚勢をはって平気だと言ったせいで中に入ることになった。
組み合わせは私と澪、唯と梓、そしてムギは何故か同行していたさわちゃんと一緒だ。
「唯たち今どのへんだろーな」
「……合流できるかな」
「無理だろ」
私の左腕にがっしりとしがみついたままの澪。
歩きにくったら仕方ない、けど、この状況は、悪くない。
そういえばお化け屋敷ってカップルの愛を深めるのにいいとかなんとか、昔なんかの雑誌で読んだような気がする。
あのときは吊り橋効果的な意味かと思ったけど……なるほど、こういうことか。