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□想像以上
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まさか僕が、一人の人にこんなに執着しているなんて、気付きたく、なかった。
僕はふとカレンダーを見る。
……あの人と最後に会ってから二ヶ月経つ。
二ヶ月も会わないのなんて、付き合い初めてから始めてじゃないだろうか。
ディーノは大抵、一ヶ月に一度は無理矢理にでも休みを作って僕に会いに来る。
「バカじゃないの?ちゃんと仕事しなよ」
そう悪態をついていても、本当は嬉しくて。
彼もそれを分かっていた。
『わりぃ!!今回の仕事はどーしても外せなくて、しかも長引くかもしれねぇんだ。ほんっとうにごめん!!』
ディーノからそう電話が来たのは、二ヶ月ほど前だっただろうか。
僕は『仕事なんでしょ?別にいいよ』そう言った。
それは半分嘘で半分本当。
ディーノと長期間会わない、そのことは正直嫌だったけれど、別に会わなくても平気だとも思っていた。
だからこの時は本当に、そこまで気にしているわけでもなかったのだ。
それなのに、ディーノはごめんだとか、そんな謝罪の言葉を並べ立てていた。
あの時はあんまり謝られたから思わずイラついてしまったけれど、今なら、あれがそこまで大袈裟ではなかったのだと分かる。
ディーノは、長い間離れることの辛さを見越していたのだ。
(確か三ヶ月ぐらいかかる気がするって、言ってたな)
それを思い出して、陰鬱な気分になる。
あと1ヶ月もあるのだと思うと、どうしても重いため息がこぼれた。
特にすることもなく、昼寝でもしようかとソファに転がる。
目を閉じれば瞼の奥に彼の笑顔。
おそらく照明の光が彼の明るい頭を連想させてしまったのだろう。
どうやっても消えそうにないそれに少々の煩わしさを感じながら僕は睡魔に身を委ねた。
「……ん、ぅ」
それからどのくらいたっていたのかは分からないが、暫くして。
眠りから覚めた僕は重いながらも瞼を開けた。
その瞬間に視界に飛び込んできた、金色。
その派手な色に反射的に目を閉じた。
そして一拍おいて、気付く。
その金色が、ここにあるはずのないものだということに。
今さっきと同じ過ちを犯さないように、今度はゆっくりと目を開ける。
そうすれば、今度はゆっくり広がっていく、金色。
「おはよ、恭弥」
寝転がった僕の視界に映ったのは、無機質な天井じゃなくて、ふにゃりとした笑顔を浮かべたディーノ。
一瞬夢かと思ってこっそりと指に爪を立ててみたら、チクリとした痛みが走った。