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□ビター、あんど、スイート
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「お、サボり発見」

ガチャリ、応接室の扉が開いた。


「……何か用?」

その軽く目に痛い金髪を揺らしながら応接室に入ってきたディーノを一瞥する。

彼が白衣を纏っているのは意外なことに彼が保険医だから。

外国人なんだから英語の先生やればいいのに、前にそう言ったら性に合わないんだとそんな返事が返ってきた。

「いや、別に用って訳じゃねーけど」

「だったら勝手に入って来ないでくれる」

「暇だったし恭弥に会いたかった。これが用事」

「怪我人来てたらどうするつもり?職務怠慢だよ」

トントンと書類の角を合わせ、机の脇に置く。

こうして仕事をやめてしまう辺り、僕はこの人に甘い。

「恭弥だって授業サボってんだからおあいこだろ」

ぽんと僕の頭のうえに軽い衝撃が来る。

どうやらこの人は僕の頭を撫でるのが好きらしい。

身長的に触りやすいのもあるかもだけど。

「いいわけ?センセイがそんなこと言って」

「俺恭弥の事生徒だなんて思ってねーもん」

くすりと悪戯っぽく笑って唇が寄せられる。

僕はそれを甘受けした。

触れるだけのキス。

それでも、ディーノとのキスは目眩がしそうなぐらい、甘い。

啄むようなキスを数度して、そのあとはソファに二人でならんで腰かける。

ディーノの好みの紅茶とティーカップが置かれたのはどのくらい前か。

思い出すのが面倒なぐらい前だということは、確か。

「今日恭弥の好きなケーキ買ってきたんだ」

気付かなかったが、ディーノの右手には僕のお気に入りのケーキ屋の箱があった。

「なんでこれが好きだって知ってるの」

「こないだ食ってたとき嬉しそうな顔してたから」

「ふーん」

バサリと白衣を脱ぎソファにかける。

汚れてしまうのが嫌、というよりは僕との関係がバレないように、らしい。

まぁ食べるときにボロボロこぼすからその可能性はないこともない。

僕からしてもディーノと付き合ってるという噂がたつことはあんまり嬉しいことじゃないから有難い。

「恭弥ーフォークどこだっけ」

「いい加減覚えなよ。そこの一番上」

「お、あった」

机の上にケーキと紅茶が揃えば準備は万端。

今の授業が終わるまでの30分は二人の時間。


僕好みのケーキの苦さとディーノの好きな紅茶の甘さは、思ったよりも、いや、想像以上に合っていた。






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