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□薬指に赤い糸
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どうして女の子に生まれて来たのだろうと、女の子に生まれて来てしまったのだろうと、若干本気で、そう思った。
リカはあたしの事を好きだと言ってくれる。
それが嘘だなんて思わない(し、思いたくも、ない)。
あたしだって、リカが好きだし。
でも、リカのあたしと違って女の子らしいところを知っている身としては、やっぱり男の子がいいんじゃないかとか、そういう引け目もあるわけで。
「なぁ、リカ。まだ、一ノ瀬のこと好きなんじゃないの?」
だから、たまに、こういう質問をしてしまう。
そしてその直後にする、後悔。
もし、もしも、リカがまだ一ノ瀬のことを好きだと言ったらどうしよう、とか。
……でもちゃんとあたしが好きだってリカ自身から聞きたい、とか。
矛盾する二つの感情が自分の中でぶつかり合う。
あたしは割と楽観的で、能天気で、無鉄砲だと自分でも思うけれど、何だかリカのことに関しては、どうしようもなく臆病だ。
「……あのなぁ、塔子」
「、な、なに?」
「塔子は、色々心配しすぎやで」
こつん、と額と額がくっつけられる。
目の前に、リカの顔。
喋れば息がかかる距離。
どうしよう、という言葉があたしの頭を駆け巡る。
だって、すごく、心臓がうるさい。
サッカーをするときは全く違うドキドキ。
まるで、息がつまってしまう、そんな感じがするような、それ。
「ウチが好きなのは塔子やって、何度言えば分かるん?まぁ、塔子が言って欲しいんなら、塔子が満足するまで、何度だって言うけど」
リカの優しい声で紡がれるあたしを安心させる言葉に、小さく頷いた。
力が抜けるのを感じて、あたしは自分が相当緊張していたことを知る。
リカの答えなんてそれなりに想像ついていたはずなのに、何をそんなにビビっていたんだ、あたしは。
「ウチは、ちゃんと女の子な塔子が好きなんやで」
「うん、分かってる」
「だから、もっとウチのこと、信じてや」
「う、ん。ごめんな」
「……怒ってる訳じゃないんやで?」
「分かってるよ」
そんなことを言ってから、改めてこういうのって、恥ずかしいし、バカみたいだ、そう言って笑い合う。
そうだな、どうせもう付き合ってるんだ。
女の子同士とか、今更気にすることじゃあ、ない。
そんな小さなことで笑い合える今に、どうしようもない幸福を感じた。
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