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□それだって誤差の範囲内
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鏡ちゃんは、つくづく不思議な子だと思う。
ネットロアにとり憑かれてしまったから、とかそういうのじゃなくて、もっと根本的な所で。
あたしが鏡ちゃんに惹かれたのはそういうものもあるかもしれない。
不思議を追い求めるコレクターとしては、鏡ちゃんのように普通とは違う子に惹かれてしまうのは、多分、必然。
きっとクロちゃんだって同じ。
もちろんネットロア憑きというのも一緒にいる理由のひとつだし、元々のきっかけはそれだったのだろうけれど、例えば鏡ちゃんがネットロアにとり憑かれなくてもクロちゃんは鏡ちゃんと一緒にいたいと思っただろう。
(……でも、昔の鏡ちゃんだったら)
前の鏡ちゃんは心霊とか全く信じない一匹狼みたいな子だったらしい。
もしその時にクロちゃんが鏡ちゃんと一緒にいたいと言ってもきっと断られたに違いない。
結局のところ、全ての根元にはネットロアが、いる。
あたしが鏡ちゃんと仲良くしようとすると、鏡ちゃんは嬉しそうな顔をする。
本当は、友達と仲良くしたりするのが好きな、素直で可愛い子なんだと思う。
ただ、あたしと仲良くするのは楽しんでくれていれているみたいだけど、どこかやっぱり完全には受け入れてくれていない、気がする。
あたしはもっと、もっと、鏡ちゃんと仲良くしたいのに。
あたしとクロちゃんが鏡ちゃんを特別に思うように、鏡ちゃんは鏡ちゃんで、クロちゃんをすっごく特別に思っているみたいだ。
本人は、約束だから一緒にいるだけのつもりみたいだけれど、きっと、そう。
もしもあたしの方が鏡ちゃんに出会うのが早かったら、鏡ちゃんがネットロアにとり憑かれたときに一緒にいたのがあたしだったなら。
鏡ちゃんはあたしと一緒にいてくれただろうか。
あたしを特別に思ってくれただろうか。
もう過ぎ去ってしまった時間をもしもと仮定するなんて意味のないことだとは知っているけれど、なんとなくそう考えてしまう。
だってスタートが同じだったら、スタートがあたしの方が早かったら、これとは違う今があったかも知れないでしょう。
まぁ、今からだって十分に時間はあるわけだけれど。
「負けないわっ、ネットロア探しも、鏡ちゃんのことだって」
そう、油断なんかしてたらすぐ奪い取っちゃうんだから。
あたしは窓越しに珍しく一人の鏡ちゃんの姿を見掛けて、一直線に彼女の元へ駆けていった。
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