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□ギャップ
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今日は事務所がお休み。

先生に会うことも、圭くんで遊ぶことも、荻さんの命を狙うことも、マフィアだのと真面目なんだかなんなんだかわからないおいかけっこをすることもできない。

まぁ、つまるところ、一言で言うならば。

「………暇」

兎は寂しいと死ぬって言うけど、僕は退屈だと死にたくなるね。

とりあえず、と僕は洋服を着替えた。

家にいたって退屈さは変わらない。

外に出たところで楽しいことがあるとも限らないけど、そっちの方がまだ期待は出来るし。

かちゃりと扉を開く。

今日の天気は曇り、まぁ散歩にはちょうどいいかな。

たん、たん、たん。

退屈な僕はわざと歩調を決めて道を歩く。

向かっているのは、本屋。

パッと見はただの本屋だけど、実は結構面白い本が売っているそこ。

最近は行っていなかったから、また何か入荷してるかもしれない。

そう思うと少しだけ楽しくなって。

気付いたらたん、たんがた、たに変わってしまっていた。


「、あれ」

本屋に着いた僕は真っ先にいつもの奥の方へ向かった。

普段は誰もいないはずのそこに、先客。

いつもの白衣を着てピンクがかった紫色の髪を震わせながら高目の段の本に手を伸ばしているそいつは、とてもよく知っている人物で。


「ノアじゃん。奇遇だね」

「っ?ゆ、優太?」


声を掛ければノアはびっくりしながら振り返った。

なんだか顔が真っ赤なのは必死こいて本を取ろうとしてたのを見られたからだろう。

別に恥ずかしがるような事じゃないのにな。

まぁ、ノアのそういうところは結構嫌いじゃないけど。


「本、取れないんなら店員さんに言えばいいのに」

「それってなんかうちがチビみたいでいややん」

「事実だから仕方ないんじゃない?」

「……優太やってうちとそんな変わらへんやん」


ぷーと膨れながらこっちを睨み付けてくるノア。

目線は、僕の方が少しだけ上。


「はは、それもそうだねっ、と」


ノアの隣に並んだ僕は思いっきり背伸びして、さっきノアがしていたように手を伸ばす。

す、と一瞬指が背表紙に触れた。

ギリギリ届くか届かないかってとこかな。

僕は一度足を下ろして、もう一度、グイッと背伸び。

その勢いのまま手を伸ばせば、ほら、それは僕の手のひらに吸い込まれるみたいに落っこちてきた。


「はい。これでいいんだよね」

「……おおきに」

「なんだよ。不満そうじゃん」

「だって、なんか悔しいんやもん」
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