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□すぐに行くから
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※吹染吹と基緑
ちょっぴり松半
僕は日本に残ることになってしまった。
そりゃあ世界の舞台で最初から戦えないとなると、それはもう、言い様のない悔しさに駆り立てられたりするのだが、それでも、染岡くんと一緒にいられるのだと思うと、幾分心が軽くなった。
それなのに。
その染岡くんは僕と入れ替わりに代表入り。
結局また僕たちは離ればなれになってしまった。
「酷いと思わない?」
僕がそう言えば、緑川くんはため息と苦笑を同時に返してきた。
「仕方ないだろそれは。俺だってヒロトと離ればなれだし。でも、俺の分までヒロトが頑張ってくれるんだと思えば、文句も言えないし」
僕を諭すように言われた言葉は、本心なのだろう。
でもやっぱり心の底からは納得できてないみたいで、落ち着きなく彼の指は髪の毛を弄っていた。女の子かよ。
そもそも緑川くんたちはアジア予選ではずっと一緒だったじゃないか。
二人きりで練習してたりしてさ。
僕なんか予選のときも一緒にいられなかったんだから。
「……はぁ」
ぺたんと机に突っ伏す。
ひんやりとした温度が心地よかった。
「……練習する?」
「まだけが治ってないもん」
「……そうだよね」
緑川くんも全く僕の気持ちが分からないわけではないのだろう、何だかんだで気にかけてくれる。
まぁ僕は今やさぐれ中だからちゃんとした返答する気が起こらないんだけど。
「あー……なんかストレス発散とかできないかなぁ」
「はは、あんまり激しく体動かせないもんね」
「んー………あ、いいこと思い付いた」
「え?」
「ちょっと松野くんと半田くんの邪魔してくるよ」
さっきから視界の端でいちゃいちゃしてて鬱陶しかったんだ。
ゆるゆると起き上がり松野くんたちのところへ向かう。
緑川くんは止めようとしたのだろう、一瞬口を開いたが、何も言わずにため息だけ漏らした。
多分、何を言っても無駄だと思ったんだね。正解。
―――――――――――
翌日。
ポストを見てみたら、見たことのない封筒。
僕宛だけど白恋中の子達はいつも同じレターセットを使ってくるからすぐ分かるし。
何故か封筒には差出人の名前がなくって。
誰だろ?そう思いながらピリピリと封を破る。
出てきた便箋は、真っ白でラインだけ入っているいたってシンプルなそれ。
いや、それよりも。
最初に書かれた『吹雪へ』その文字に、僕は血がざわつくのを感じた。
だって、だって、この字、は、僕が見間違う筈がないようなもので。
一応、最後の最後まで目を通す。やっぱりだ。
う、わ、どうしよう。
ざわついた血と一緒に喜びが流れているのを感じた。
「みっ、緑川くんっ」
「どうしたの?ていうかそんな走って大丈夫なわけ」
「そんなことどうでもいいよ!!見てこれそそそ染岡くんから!!!」
転がり込むようにして入ったのは緑川くんの部屋。
ケガが治りきっていない足で走っていたことに緑川くんは呆れていたけれど、大丈夫、痛くない。
僕の手のなかにある封筒を見て緑川くんは吹き出して、それから自分の右手を上げた。
彼の右手に握られていたのは、僕のとそっくりの封筒。
「ヒロトから」
にこり、そう言って笑った顔は本当に幸せそうだった。
「マネージャーさん達が染岡に手紙書くように言ったんだって」
で、それを見たヒロトくんも真似して手紙を書いたとそういうことらしい。
「僕の電話そんなに迷惑だったかなぁ」
「電話?」
僕は染岡くんの声聞きたさに国際電話で合宿所に暇さえあれば電話をかけていた。
毎回練習中か食事とかで結局一回も話すことは出来なかったんだけど。
そう言えば、一回久遠監督が電話とったこともあったっけ。
あれは怖かったなぁ、思わず受話器置いちゃうぐらいに。
それを言ったら緑川くんはよくそんな度胸あるね。と、少し青ざめながらも笑っていた。
「まぁ、終わりよければ全てよしってことで。でももう電話しないでね」
「えぇー……」
さぁて、返事書くかな、そう言って起き上がった緑川くんに僕も着いていく。
世界で待ってる、手紙に書かれたその言葉、それだけで、僕は頑張れる気がした。
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