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鼻腔を擽るいい香りに目が覚めた。
いつもと違うそれに、マナが頑張ったのかな、そう思い、思わず笑みが溢れる。
僕は布団から起き上がり、軽く身を整え、リビングへ向かった。
「おはよう。いい匂いだね」
「おはようございます。博士くん」
「あ、おはよう……って嘉音くん、起きてたんだ?」
癖なのか恭しく頭を下げる嘉音くんに驚愕する。
しかも彼が立っているのはキッチンで、本来そこにいるべきマナはちょこんとテーブル前の椅子に座っている。
いや……何故?
そんな僕の疑問に答えるようにマナは笑顔をこちらへ向けた。
「すっごいよねー!!これ全部嘉音お兄ちゃんが作ったんだよー!!」
「へぇ……すごいね」
お客様に料理を作らせるのってどうなんだろう、そうも思ったけれどそれを言うより先に感嘆の声が出てしまう。
僕もマナも、ほとんど和食しかレパートリーがないから、洋食が並んでる様はなんというか、圧巻で。
しかも全て高クオリティともなればそれはもう、輝いているとしか言えなかった。
「喜んでいただけるなら幸いです」
「いや、まぁすごいしありがたいんだけどさ、わざわざここまでしてくれなくたって」
「好きでやっていることですから。冷めないうちに食べてください」
……なんだかすっかり使用人モードだなぁ、嘉音くん。
料理作ってる間に何かのスイッチが入ってしまったのだろうか。
「ん、じゃあ食べるけど」
そう言いとりあえず椅子に座ろうと手をかけ、止めた。
「……悟史くん、は?」
「まだ寝てます」
「……起こすべきかな?」
「そうですね」
一瞬考えた後に嘉音くんが頷いたので、二人で悟史くんを起こしに行くことにした。