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□モノより大事なコト
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いつもよりすんなりとした目覚めに思わず苦笑した。
いくら、いくら澪との初デートだからって、気張りすぎだろ私。
デート、って言ったってなんて事はない、お買い物。
二人きりでお買い物、なんてそんなこと、今までだって何度もしてきたのに。
心持ちがちょいと変わるだけでこんなにも緊張するものなのか。
自分に若干呆れつつも澪も緊張してるんだろーな、そう思えば堪えきれなくなった微笑が洩れる。
待ち合わせまであときっかり一時間。
その間に髪とかして、ご飯食べて、あぁそうだ、洋服はどうしよう。
ライブの時とおんなじぐらいの高揚感を胸に、私は一つ、ぐいと伸びをしたのだった。
―――――――――――
午前九時。
普段ならそのくらいの時間にどちらかの家の前がお決まりの待ち合わせ場所なのだが、今日はお店の前で待ち合わせ。
私は別に普段通りでいいと思ったのだけれど、澪が「そんなの恋人っぽくない!」と言い張るので、こちらになった。
「……やっぱりいつも通りにしときゃよかったなぁ」
こつんと石っころを蹴り飛ばしながら呟く。
普段なら絶対遅刻などしないはずの澪が待ち合わせ時間から五分経っても来ない。
もし家の前待ち合わせだったら、澪の様子見に家に上がらせてもらったりできたのに。
ここから今更戻る気にはならないし、それに、引き返してすれ違いになる可能性だってある。
とりあえず電話でもしようかとケータイに指をかけたその矢先、聞きなれた声が喧騒の中から聞こえた。
「りーつ!!」
サンダルだから走りにくそうにしながらも、小走りで駆けてきたのは、紛れもなく、デートの相手である、澪。
澪は私の前で足を止めると、肩で息をしながらも開口一番、ごめんと言ってきた。
「昨日、よく、眠れなくてっ、今日の朝も、洋服どうしよう、とか、考えてたら、」
「あー、わかったわかった。わかったから、まず息整えろって」
私がそう促せば、すーはーと深呼吸をする。
その様子に思わずくすりとしながらも、内心少し焦っていた。
まずいな、今日の澪、すっげぇ可愛い。
ずっと一緒にいたから分かる。
今日の澪の格好は、相当気合いが入ってるときのそれで。
私もやっぱりも少しどうにかするべきだったかな、と思いつつ、どうもできなかったから今この状態でここにいるのだ。