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□頑張る理由
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僕にやらせると決めたアスランは本当にやらせる。
それは長年の付き合いでとっくに分かっていたことだ。
アスランはもう監視体制で、部屋の角に移動すると、腕と足を組んで壁にもたれ掛かった。
何微妙に格好つけてるのさ。腹立つ。
今日何度目かわからないため息をつきながら、アスランに何か言われる前にと仕事を再開した。
「…………」
「…………」
無言の空間の中僕が印鑑を押す音だけが一定のリズムで響く。
……無言の空間が気まずいってより、僕に突き刺さる視線が気持ち悪い。
そりゃあ監視、なんだから、僕に声をかけたら本来の目的とは違ってしまうし、監視というからには僕のことを見ていて当然なんだけどさ。
逆にそんなに見られたらやりにくいっていうか。
「……キラ、手が止まってる」
「あーはいはい。すみませんねー」
しかもさっきから会話といえばこの調子だ。
……いや、こんなの、会話だなんて言わない。
あーもうムカつくなぁ。
なんで僕、こんなんのこと好きなんだろう。
ちらりとアスランに視線を向ければ、目があった。
「……どうかした?」
「別にっ!!どうもしてないけど」
「そう?じゃあ仕事して」
「……なんなのさ。仕事仕事、って。別にアスランには関係ないでしょ」
飄々と言うアスランに、そう言ってから少し反省。関係ないは言い過ぎたかも。
けれどもアスランはそんなもの全く気にしてないようで、それどころかちょっと笑った。
「関係ないわけあるか」
「……何で」
「それ終わったら、デート行く予定だから」
嫌気がさすほど甘ったるい笑顔を向けながらそう言われて、いらだちを通り越して呆れてしまった。
デート行く予定、って、何それ、聞いてない。
「……アスランさぁ、僕に断らずに僕の予定決めるのやめてよね」
「あ、ちなみに、明日から二日休みだから」
「人の話を聞け………って、はぁ?」
明日から二日って、元々は仕事の予定だったはず。
そこで僕ははたと気付く。
明日から二日休み。
そして通常ではあり得ないほどの仕事量。
これから導き出される答えは一つ。
「……アスラン?もしかして僕が今やってるのって」
「あぁ。明日明後日の分も足した三日分だ」
どうりで多いわけだよ!!
ていうか三日分を一日でやらせようとしてたわけアスランは!?
「……何でまたそんな」
「嫌ならやめるか?」
「いいよ別に。どうせもう二日かけての予定作ってあるんでしょ」
「ホテルも予約済みだ」
……はぁ、何でこう、アスランはいつも事後承諾なんだろう。
そうしないと僕が断るとでも思っているのだろうか。
デートぐらい、言ってくれればちゃんと予定開けるっての。仮にも恋人な訳だし。
でも、まぁ、デートしたいって思ってくれてた事自体は嬉しいかな。
「アスラン、僕これ頑張って終わらすからさ」
「……うん」
「終わったら、甘いもの奢ってよね」
そう言えばアスランはこっちが恥ずかしくなるような嬉しそうな顔をして。
それから、笑いながら頷いた。
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