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□幸せになる方法
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どうやら人間は、どんな幸せを手にしても不安にならずにはいられない生き物らしい。
木野先輩と付き合えて、キスだってもうして、こんなにも幸せなことってないはずなのに、私の心には漠然とした不安が巣食っていた。
もしも私が男の人だったら、こんな風に思うことはなかったのだろうか。
私が木野先輩を一番幸せにできる自信がある、それは本当。
でも、仮に女の子の幸せが結婚して、子供を産むことならば、私は木野先輩とずうっと一緒にいることはできない。
「……音無さん?」
そんなことを考えていた矢先、寝ていた筈の木野先輩が私に話しかけてきた。
私はとても驚いたのだけれど、至って平然を装って彼女の方を向いた。
木野先輩は寝起きらしく、可愛らしく目を擦りながら私に歩み寄ってくる。
「こんなとこにいたんだ」
「どうしたんですか?」
「それはこっちのセリフだよ。さっきちょっと目が覚めたらさ、音無さんがいなくて、ビックリした」
笑いながら私の隣に座った木野先輩の私と同じ筈のシャンプーの香りに少しだけどきりとした。
「なんか、眠れなくって」
「ふふ、今日の試合も凄かったもんね」
どうやら木野先輩は、私が眠れなかった理由を、今日の試合の興奮を引きずっていたからだと思っていたらしい。
もちろんそれもないことはないけれど、実際はただ木野先輩のことで悶々と悩んでいただけ。
それを言う気のない私は、曖昧に「そうですね」と相槌を打つ。
「これからもっと強いチームが出てくるのに、今からそんなんじゃ、寝不足ばっかになっちゃうよ」
苦笑しながら言われて、ほんとになぁ、なんてぼんやりと思う。
私が返答しないのを気にしたのだろう、木野さんは不思議そうに私の顔を覗き込んできて。
私は出来る限りの気丈な笑みを浮かべて「ちょっと眠くなってきたみたいです」と返して誤魔化した。
「じゃあ、そろそろ部屋戻ろうか」
そう言った木野先輩は、あたかも当然のように私と彼女の手のひらを重ねた。
それに嬉しさと幸せを感じつつ、こんなこと木野先輩にとったらなんてことないのかなぁってそう思ってから、あまりに酷い自分の思考にほんの少し苛ついた。