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□壊れているのは僕、そして貴方
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広くて、無機質な部屋。

扉は僕の指紋でしか開かなくて、窓もない。

他に外に繋がっているのは小さな通気口だけ。

そんな部屋の中にぽつりと置かれたベッドの上、ベッドに手錠で繋がれた状態でいるのは、風丸さん。

「風丸さん、」

にこりと笑って話しかける。

すると、風丸さんは虚ろな瞳をこっちに向けた。

僕の姿を認めれば、風丸さんはその肩を小さく震わす。

じゃらりと手錠が音を立てる。

彼の紅い瞳には恐怖が滲んでいて。

僕の心臓がドクリと脈打った。

……風丸さんの事が好きだ。

それは初めて見たときからずっと変わらない感情。

変わったのは相手に求めること。

最初は、ただ、僕の想いに応えて欲しいってただそれだけだったんだ。

でも次第に、風丸さんの中に僕の事を刻み付けたいって思うようになった。

もちろんそれが愛情であるに越したことはないけれど、彼の中に僕の存在を満たせるならば、それはどんな感情でも構わなかった。

例えば、憎悪、恐怖、そんなものでも、風丸さんの中が僕でいっぱいになるのなら構わなかった。

……だから、風丸さんが僕を見て恐怖の表情をしていても、僕の心は満たされる。

だって、今彼は僕の事しか考えていないんだから。

「風丸さん、ご飯、何がいいですか?」

笑顔を絶やさずに少しずつ風丸さんに近づいていく。

「……なんでも」

掠れた声。

昨日散々喘いでいたから、声が枯れてしまったんだろう。

後でのど飴を持ってきてあげよう。

「あのさ、宮坂」

「はい、何ですか?」

「……これ、取って、痛い、から」

これ、とは手錠の事だろう。

見れば、腕は真っ赤に痕がついていた。

流石にちょっと可哀想なので、手錠を外してやる。

そもそも拘束していたのは僕の趣味で、こんなことしていなくても彼がここから出られることなどないのだ。

「痛そう」

腕についた赤い痕を舐める。

ほんの少し、血の味がした。

「、っ」

唾液が傷に染みたようで、風丸さんは顔を歪ませた。

そんな顔ですら、なんとなく綺麗で。

もっと見たくて傷に指を這わす。

「、みや、さか、痛いっ」

「知ってます」

じわりと風丸さんの瞳に涙が溜まる。

その眼に唇を落とせば、風丸さんは身をよじって逃げようとするけど、僕が腕を掴んでいるから逃げることは出来ない。
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