メイン2

□玩具は手放さない
1ページ/2ページ

※なんか設定が色々おかしい。



俺はこいつが嫌いだ、大嫌いだ。

今すぐ消えてしまえばいいとさえ思っている。

――だったら、何故。

「……俺、ここ出るんだ。」

何故、こいつのこの言葉に、どうしようもない喪失感を感じているのだろう。

俺とこいつ、佐久間次郎は、親に捨てられ、同じ弧児院で育った。

ここにいることで別段不自由なことはなかったので、それが不幸だと思ったことはない。

そして俺は、佐久間が小さい頃からどうにも嫌いだったのだ。

だから、苛めた。

最初は単純な子供の思考から。

それがいつの間にか、当たり前の事になる。

佐久間の方は何故だか苛められているのに辛いと人に言うことはなく、それも更に俺をイラつかせた。

そしてその佐久間が、弧児院を出るというのだ。

佐久間が俺の視界から消える。

俺の心は、歓喜に包まれるはずだった。

しかし、実際に感じたのはどうしようもない虚無感。

「……不動、俺はさ。お前から離れられて嬉しいと思うはずなんだ。だけど、なんだろうな、なんか寂しい」

「……寂しい?」

「あぁ。それ風丸に言ったらさ、何て返ってきたと思う」

そこで佐久間は乾いた笑い声を溢す。

きっと風丸に言われた言葉が、馬鹿馬鹿しくて、それでも全くの事実だったのだろう。

「『お前たちずっと一緒にいただろ?寂しくなって当然だ』だってさ」

「…………、」

否定も、反論も、出来なかった。

酷く、イラつくのに。

否定する言葉を、俺は探し出せなかった。

「寂しくなんて、ねぇよ」

寂しくは、ない。

それは確かなことで。

だけど、だったらなんなのだろう。

佐久間を、離したくない。

……きっとそれは、幼稚な独占欲。

小さい頃から、俺はこいつを苛めてきた、だからこの喪失感は、幼児がお気に入りの玩具を取られたのと同様の感覚なのだろう。

「っ、あはははは!!!!!」

それを自覚すれば、どうしようもない可笑しさが込み上げてきて。

身をよじって笑えば、座っていたブランコの鎖が、ギィ、と嫌な音を立てた。

「佐久間ぁ」

「……、」

乱暴に襟首を掴んで引き寄せる。

「俺も、明日ここ出る事にした」

「!?お前、何言って、」

佐久間はただ、呆然と目を見開いていて。

それが酷く面白く思えた。

「お前は俺の物だ!!……俺から逃げられるなんて思うなよぉ!?」

それでも抵抗を示さない佐久間に、噛みつくようなキスをした。







―――――――――――
Next
→あとがき。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ