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□小声で呟く二文字
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「あーずーにゃん」

ぴょん、ちょっぴり跳ねて私の背中に飛び付いてくる、唯先輩。

もはや挨拶と化しつつあるこの行為に、私は少し戸惑っている。

唯先輩に抱きつかれるのは嫌いじゃない、ていうかむしろ好きな方。

それでも、最近抱きつかれる度に、心拍数が跳ね上がって、顔がどうしようもなく熱くなる。

「先輩、離して下さい!!」

「やーだー」

「なんでですか」

「だって今誰も居ないもん」

「……そんなの理由になりません」

微かに顔を移動させ睨み付けるも、返ってくるのはいつものぽわぽわした微笑み。

正直、唯先輩が何を考えているのか分からない。

きっと何も考えてないってのが一番近い答えなんだろうけど。

「せんぱーい」

「えへへ、あずにゃん、あったかいね」

「……っ」

ぽわんとした笑みを向けられる。

また跳ね上がる、心拍数。

そしてあまりにもその笑顔が幸せそうで。

「……はぁ、なんでこんな事するんですか」

「好きだから」

「………他の先輩が来たら離して下さいよ」

諦め半分でそう言えば、短い返事が返ってきて、回された腕に力が籠った。

……そうして数分。

いつになったら離してくれるのだろう。

確かに、他の先輩が来るまでいいとは言ったけれど。

それでも、ずっとこうしているのって、なんか変だ。

「唯先輩?」

「んー」

「いつまでこれしてるんですか」

「りっちゃんたちが来るまで」

「いつになるか分かったもんじゃないですよ?」

そう言うも、返ってくるのは、んーとかにゅーとか変な返事だけ。

せめて日本語喋りましょうよ。

どうせ何言ったって離してくれないんだろうな、そう思った私は、背中側にいる唯先輩に体重を預ける。

そうすれば、なんだか唯先輩が息を飲んだのが伝わってくる。

「あずにゃん、好きだよ」

小さく紡がれたその言葉は、私の耳を擽った。

その感覚が、むず痒くて、それでもとっても心地よくって。

いつもなら、絶対にないことだけれど。

「私も、好きです」

そう、返していた。







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