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□大事なのは薬じゃなくて
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「うー………」

どうしたもんか。

カゼルが、変だ。

いや、元々変な奴だとは思うが、そうじゃなくて。

確かにあまり饒舌なタイプではないが、

「……ガゼルー」

「……、」

名前を呼んでも、全く返事をしない。

いつもなら名前呼んだらすぐにこっち来んのに。

「………むー」

仕方なく、立ち上がって、俺に背を向けているガゼルに近寄る。

そして肩を叩くと、ガゼルは叫んだ。

「来るなっ!!!」

「……はぁ?」

パシンと振り払われる、手のひら。

あまり痛くは無かったが、唐突に振り払われたことに、ショックを受けざるを得なかった。

「ちょ、ガゼル?」

「いいから私に近付くな」

「なに言ってんだよ」

要領を得ないガゼルの返答に腹立たしさを感じつつも、ガゼルの前に回る。

そこにいたガゼルは、少し涙目で、頬も赤みを帯びている。

…………っておい。

俺の手のひらをガゼルのおでこに当てる。

「うっわ、あっつ」

明らかに俺の体温よりも高い、その温度。

平熱が俺よりも五度程低い筈のガゼルが、俺の体温を通り越している、ということは。

相当重症だ。

「ガゼル、お前すげぇ熱あるぞ。ちょっと待ってろ、今薬持ってくる、あぁいや、やっぱベッド行ってろ。一人で歩けるか?」

「……バーン」

「なんだ?」

「心配、してくれているのか。………嬉しい」

ふ、と微笑むガゼル。

…ちょっとかなり大分気持ち悪い、マジでこいつ重症だ。

「別に、心配なんてしてねぇし。つーかさっさとベッド、ふぇ!?」

いきなり引き寄せられて、ガゼルの膝の上に座るような形になる。

「が、ぜる、」

「……冷たい」

「バカ、お前が熱いんだよ」

「……もう少しだけ、こうしていたい」

俺を抱き抱えるようにして、弱々しく言葉を吐くガゼル。

いつもの強気なガゼルじゃないのに、俺の方までなんだか不安になってしまう。

「今だけだからな。ちゃんと薬飲まねぇとダメだし」

「あぁ」

首もとに顔を埋めるようにするガゼル。

熱のときって訳もなく心細くなったりするのも分かるから、振り払うこともできない。

「……ガゼルが熱だしたのなんて何年ぶりだ?」

「さぁな」

「お前体強いもんな」

「……バーンよりは」

「んだと?!」

振り向こうとするも、がっちりと抱き締められていて動くことはできなかった。
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