むくむく
□IN THE NIGHT
1ページ/6ページ
満月が闇夜を照らし、そよそよと花瓶に入ったススキがなびく
スポーツ然り読書然り食欲然りの秋である
そんな夜の下、障子に囲まれた部屋に雲雀は居た
満月だと言うのに月を見るわけでもなく、団子を食べるわけでもなく
筆で書かれた字を目で追うだけ
「ハァ……」
溜め息を付きたいのはこっちだ
どうやら雲雀は書物に飽きたらしい
ふわぁ、と欠伸を零すと、畳に寝転がった
暴君雲雀恭弥にとって読書など性に合わない
結局そのままウトウトしていると廊下からパタパタ、いやドタドタと走る音が聞こえてきた
子供のような足音だ
配下である草壁は今日は居ないはずだ、と雲雀は体を起こす
嬉しそうな笑みを浮かべながら襖をザッと開けると
黒い衣を纏った小さな少年が立っていた
「trick or treat」
美しく滑らかなアルトであった