むくむく


□真と理
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嫌そうな顔はして受け取ったものの雲雀くんは僕の渡した数本の線香花火を一本ずつやっていた
その顔は緩み、楽しそうな笑みが垣間見える

僕と同じように花火なんてくだらないと思っていたわけではないらしい
ただ彼は群れたくなかっただけのようだ


あっちのように騒ぎながら手持ち花火を振り回すのも、沈黙の中線香花火を見つめているのも僕にとっては何ら変わりもない

しかし一つだけこれが楽しいと思える理由がある
――雲雀くんがいるからだ



「ねぇ骸、もう一本ちょうだい」
花火を見ている間はあんなに可愛いらしい顔をしていたのに、花火をせがむときは仏頂面
でも渡して火を付けるとまたあの顔になる
思わず見つめてしまう

そう、僕は雲雀くんに持ってはいけない感情を持っているわけで…



「骸…」
「な、何でしょうか?」
雲雀くんは僕の驚きに何も反応をせず言葉を続けた

「花火って火がついてなきゃ面白くないんだね」
「え?」
「火のついてないものをたくさん持っているより、火のついたものを一本持ってる方がいい
たとえすぐに消えてしまうとしても、燃えている間が一番見ている甲斐がある」
「………?」
「…何でもない」

僕が理解していないのを顔で判断したのか目線は一瞬で花火に戻った
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