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□午前0時、1秒のベーゼ
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今日、3月4日。
両親に彼氏の家で泊まると言ったらすごい引き止められた。だから無理矢理家を出た。お母さんは今頃怒り散らしているだろう。だが私はそんなもの知らない。


『あと、1分だね。』

「ふふ、そうだね。眠くない?」

『ううん。大丈夫。』


向かい側で本を広げているのは精市。
私は彼の誕生日を祝うために両親を押しのけてここまできたのだ。


『・・・精市、精市、』

「ん?」

『ちょっと早いかもしれないけど、誕生日おめでとう。』

「ふふ、ありがとう。」

『私、来年も再来年も、この先ずっとずっとこうやって祝えるように頑張るよ。だから、私のこと嫌いにならないでね。』

「嫌いになんてなるわけないだろ。」


秒針が12に重なろうとする。
この針が重なった瞬間、彼は15歳になる。
言いようのない不思議な気持ちに胸が震えた。

白く透き通る肌。
緩くウェーブを描く髪。
真っ直ぐに私を貫く蒼い瞳。
綺麗な容姿の中に隠された情熱的な心。
全てが私を捕らえて放さない。


『大好きだよ、精市。』

「・・・俺のセリフだよ。」


この心臓が溶けて彼と同化すればいいのに。そうすれば、私は彼とずっと一緒なのに。

ああ、大好き。愛してる。
好きすぎて、ゆるりゆるりと彼との距離を縮めた。




午前0時、1秒のベーゼ







彼の香りに包まれて1秒、また1秒と。






▼title by「Aコース」様


▼「ゴッドネスガーデン」様提出


▼「Charlotte」 ちか

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