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□俺様な彼
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今日は久しぶりにテニス部の練習がない日だった。
彼氏のブン太とはクラスも離れてるせいか、最近まともに話すらしてなかったから、
「放課後遊ぼう」とメールを送った。
返信には、
「ごめん無理」とだけ書かれてて、落ち込んだのは言うまでもない。
そんな私は空いている放課後、友人とゲーセンで格ゲーをしようということになった。
友達と格ゲーを楽しくするはずだった。
格ゲーなんて滅多にしない友人をぼっこぼこのめっためたにして頂点に君臨するはずだった。
そう、私は楽しむはずだったのだ。
「・・・ぁ、・・・や、やっぱやめよ!クレープ食べよ!」
ゲーセンに来て急にそう言い出した友人。
どうしたというんだ。
明らかに焦っている。
・・・まさか。
友人の不自然な言動から察し、私は先陣を切ってずかずかと格ゲーに向かう。
あちゃあと言わんばかりの友人。
私は(多分一つ下だと思われる)女子にきゃあ、丸井先輩すごい!格闘ゲーム強いんですね!なんて言われて得意気な顔してる赤くて丸い豚を発見したのだ。
怒りがどばっと噴きあがる。
「・・・・・・・ちょっと、鞄持ってて。」
「ちょ、ちょっと!ほどほどにしなよ!顔が般若みたいになってるよ!」
「黙ってて。私は今からあの豚に対戦を申し込むの。」
友人ははぁと溜め息をついて私の鞄を持ったまま2つ先の本屋にいるね、と言って立ち去ってしまった。
私は財布から50円玉を弾き出してコイン投入口に叩き込む。
すぐに対戦モードになり、私は使い慣れたキャラクターを選択する。
「あれ、なんか対戦モードになってますよ?」
「ん、向かい側から誰か申し込んできたんじゃね?」
「へえ、そういうこともできるんだあ!頑張ってください丸井先輩!」
「おう!」
何を愚かなことをこの負け豚が。
お前が一度でも私相手に勝ったことがあるか!
ま、この浮気者の豚ちゃんは相手が私とは知らないけどね。
せーぜーその可愛い年下女子に醜態をさらしてぶーぶー鳴くがいいわ!
ゲームは思惑通りに進んでいった。
「つ、強え・・・!」
ふふ、馬鹿め!
私は今までのお前との対戦でお前の癖や攻撃パターンを全て把握してるんだよ!
「ふ、ふんぬ・・・!」
ほれほれ、私が走り出すと足をかけようとするその癖!
天才だか凡人だか知らないけど、所詮テニスだけの話だっての!
ゲームは華麗なフィナーレを迎える。
私は輝かしい勝利を収めたのだ。
「くっ、超強え!相手誰だって・・・・・・あ、」
「あらまあ随分と弱いじゃない丸井くん?」
私の顔を見るとしまったとでもいうような顔をする。
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