きねんれんさい

□4.騒がしい廊下で
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どくり、と体の中で何かが渦巻く。

今まで感じたことのない、不快な感情。


黒く心を覆うその感情が、なぜか自分を醜く写した気がする。

恥ずかしくて、醜くて、急いで教室に入った。
誤魔化したくて研究レポートを雑に捲っていくが、頭に全く入らない。



頭に浮かぶのは神威先生と女生徒たち。



何か気を紛らわせないと。



「・・・あ、えっ・・と、あと一ヶ月と三週間でテストだー!三年間学年トップの記録を潰さない約束を守るぞー!
・・・え、っと、あと私は歴史が苦手だから頑張るぞー!それから、お母さんとお父さんの願望通り東大に・・・」


・・・あ、れ?


私、そういえば今まで勉強以外のことしたことない。
お母さんとお父さんの思うままになってる。

いや、いいんだ。

だってお母さんとお父さんは絶対だもん。
正しいのは・・・


『・・・正しい?』


今までお母さんとお父さんの言うことは全て正しいと信じて生きてきた。
そこに私の意見は存在しない。

私、まだ一度も"私の人生"を過ごしてない?


『・・・・・東大・・・・やめようかな・・・』



私は、どんな生き方を望んでる?


頭に浮かぶのは神威先生の顔。



『・・・・・・・』





騒がしい廊下で

見てしまった











fin.
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