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□拍手お礼文
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「・・・幸村、図書委員じゃないよね?」

「え、・・・その、違うけど・・・・松本に頼まれたんだ・・・・・き、きみも?」

「・・・・・・・・そう。私も友達に頼まれてさ。よろしくね。」

「う、うん!よろしく。」

「・・・・・・・・。」


思えばあんなに喋ったあの子を見るのはあれが最初で最後かもしれない。
そしてあの子が喋ったことに事実が含まれているとすればテニス部の件だけである。
・・・入院している彼を(強制的に)お見舞いに行ったときもそうだったが、彼は全ての部分において曖昧なのだ。
私を見れば目を丸めて驚いたような表情をしてそれからぎくしゃくしはじめる。
会話をしてみれば見事に一字一句につっかえてへらりと情けなく笑ってみせる。

・・・私から言わせてもらえば、彼はへたれなのだ。
王子様?とんでもない。
どこが爽やか?
あなたは本当にあの噂の幸村精市かと何度問おうかと迷ったことか。
同じクラスになったときはなおさらだった。

そして今。
相変わらず・・・いや、いつもに増してぎくしゃくしている。
本当になんなのだろうか。
なんでこんな曖昧なののだろうか。

「・・・・・・あ、あのさ、」

「なに?」

「・・・・え・・っと、誕生日とか・・・聞いてもいい?」

「・・・・・・・・・・。」

誕生日を聞くのに何故こんなにどもるのだろうか。
だんだんと苛々してくる。
どちらかというとうだうだぐだぐだが嫌いな私にとっては苛々を通り越して怒鳴りつけてしまいたいぐらいだ。

「・・・・・・今日。」

「え、」

「私の誕生日でしょう?今日だよ。」

「え、・・・・・え、えっと、・・・・なんか、なんか欲しい物とかある!?」

「・・・・・・・幸村、それだけ?」

「・・・は?」

「ずっと前から私に言いたいことがあるんじゃないの?」

「っ!?」

「もう言っちゃってよ。そんでそんなもじもじすんのやめなよ。」

「・・・も、もじもじ?」

「そう。黙ってたって幸村が言いたいことは伝わらないんだから。私に何か言いたいならはっきり言って、他の皆と同じようにもっと自然に振舞えば?」

「・・・・・・・・、」

黙り込んでしまった幸村に、ぷつっと血管が切れた気がした。
私は気付けば立ち上がり、幸村と向かい合い、勢いよく胸倉を掴んで顔を近づけていた。

「じゃあ私がはっきり言うよ、あのねぇ・・・・・、」



見せろ男気!



すると唖然としていた幸村が覚悟を決めたようにきゅっと唇を引き締めた。
顔を真っ赤にさせて私の胸倉を掴み返し、至近距離で彼は怒鳴るように大きな声で叫んだ。


「ずっと前から君のことが大好きだ!付き合ってくれ!!」「・・・・・・・・え?」


Title by Aコース
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