「ねぇ、いつまで寝てる気?」
「あと5分〜」
「へぇ、いい度胸だね。せっかく僕が起しに来てやったのに」
「うぎゃっ」

暖かかった布団が消えた。
朝の冷たい空気が私を襲う。
あ、陽射しまで襲ってきた!

「や〜まだ寝るの〜寒っっ翼、布団返して」
「やだね」
「うー…」

目を開けないまま(開けたら絶対後悔する)手探りで奪われた布団を探す私。
少し腕を彷徨わせると、ようやく布を見つけ、勢いよく引っ張った。

「うわっ」
「へ?」

急に感じた圧迫感。
恐る恐る目を開くと翼様が顔に青筋立ててお怒りでした。

「おーまーえーはっ!!」
「え?やだ私翼引っ張っちゃったの?」
「見てわからないわけ?お前のその手はなんだっての」
「げ」

翼にいわれてみてみると、私の手はしっかりと翼の服の端を握っている。

「あ、あは…」
「僕にこんなことして…わかってるよね?」

翼の笑顔が怖い。
目が、目が笑ってないですよ?翼さん。
顔は笑っているものの、今私の顔色は真っ青なんじゃないだろうか。
怖くなって目をつぶっていたら

ぺちん

「え?」

翼がにたり、と笑っている。
おでこがじんじんする。

「ほら、目、覚めたんだろ?」
「え?え?」
「さっさと用意して下来なよ」
「あ、う…ん?」

ん?んん?
なんだかんだで結局目が覚めちゃったんじゃん。

はぁ…

あぁ、これで準備してなかったら翼にどやされるのかなぁ?

「うわっ怖っ」

想像して身震いする。
寝起きの頭に翼のマシンガントークはキツそうだ。
ってか何でわざわざ翼が起こしに来たのよ。

…………あ

「翼翼翼〜!」
「なに?うるさいんだけど。」

顔をしかめて翼が振り返る。
降りてきた私を見てさらに眉がつりあがった。

「きょ、今日ってあれ?翼が言ってた映画行く日だっけ?」
「そんなことも忘れたわけ?行きたくないならいいよ。別に。」
「や、行きたい行きたい!!」

ため息をつきながら翼は私の服を冷たい目で見つめたまま

「…ねぇ…その格好で行く気?それなら僕は一緒に行きたくないんだけど」
「え?っあぁ!!ご、ごめん」
「いいから行くならさっさと支度しろよ」
「5分!5分で準備するから!」

急いで自分の部屋に戻る。
できるだけ急いで準備をして翼のところへ。
息を切らして戻ると『やっと』と腰を上げた。

「行くよ」
「うん」

ドアを開けたら冷たい風が吹き込んできた。

「寒っ」

そう言った途端手が暖かくなる。
隣を見ると翼が手をつないでくれていた。

「ふふっありがと」
「別に」
「まだ間に合う?」
「さあね。お前がもう少し早く起きれば確実に間に合ったけど。」
「ごめん。…ダメだったら次の回でもいい?」
「今度は余裕もってよね。」
「うん」

えへへと笑うと不思議な顔をされたけど、うれしかった。

温かい翼の手を握りながら。

「大好き」







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