短編集

□ある日の午後
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市は城内をうろうろしていた。市は家事も仕事もしないので、一日中することがない。唯一あると言ったら長政と散歩に行くことだ。でも最近、前田慶次が居候しているせいなのか仕事が詰まっているせいなのか分からないが、長政は気が立っていた。話しかけても相手にしてくれないのを、市は気にしていた。どう努力しても何時も空回りしてしまう。市は最近独りぼっちだった。


「長政様………。」


ぼそっと呟いた時だった。外から長政の声が聞こえたので出てみると、長政が慶次と話していた。話しかけるのも悪いと思ったが、いてもたっても居られず話しかけた。


「長政様…!!」


「い……市…。」


「長政様…市……長政様とお出かけしたい。」


「あ…あぁ……。じゃあ、散歩に行くか?」


「………はい!」


市はしばらくぶりに外へ出た。それは忘れる事の出来ぬ楽しいひと時だった。



でもそれは長くは続かない事は市も予測できただろうか………。

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