青い春〜短い夢〜

□跡部景吾の憂鬱
1ページ/1ページ


「流石のキングでも無理だよね」


ぽつりと呟いた隣のマネージャー。
生徒会役員でもないくせして生徒会室に勝手に入って来る女。全くもって邪魔だ。


「俺様に出来ねぇ事なんてねぇよ」
「うっそぉ」


頬杖をつくマネージャーの目の前に、どかん、と書類を置いた。


「…なにコレ」
「テニス部関係の書類。書け」
「おま、部長だろ!?」
「関係ねぇし」
「キィィィィ!!」


猿のような鳴き声をあげ、素早く空白を埋めていくマネージャー。それでも口は止まらない。
ぺらぺらぺらぺら、何事かを喋っている。


「ねぇ、跡部」
「あーん?」
「ラグビーってできる?」


はぁ?
急に話しかけてきたかと思えば意味がわからない発言。なんなんだコイツは。


「できる?できない?」
「はっ!俺様に出来ねぇ事はねぇんだよ」
「ふーん…」


適当に返し、シャーペンを走らせる目の前の女にいらついた。
テメェから聞いたんだろうが。


「いやぁさ、ニメートルあるラグビー選手と戦ったらどうなるのかなぁ、と」


うへへへ、と笑うマネージャー。
俺の頭に浮かんだのは、大体樺地くらいの身長で、樺地以上の体重。がっちりとした体格の男だった。


「楽勝で勝てるな」
「えー?嘘だぁ」
「本当だ。」
「じゃあ、明日対戦してみる?」


ニッコニコと笑うマネージャー。
俺は若干顔が引き攣ったが、急いでいつもの顔に戻した。


「はっ!俺様がぼこぼこにしてやるぜ」
「まじで?」
「だから書類を早く終わらせろ」
「もう終わったー」
「………あぁそうかよ」


書類を受け取り、確認する。
…大丈夫……だよな?
とりあえず、明日が嫌だと思いつつ、仕事を続けた。






次の日、試合をした跡部が入院した。
例の選手にタックルをされたからである。

お見舞いに行ったマネージャーが聞いた言葉は、跡部とは思えないほど弱っていたという…。










「アイツは人間じゃねぇ……!!軽トラだ…!!」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ