青い春〜短い夢〜
□アーモンドチョコ
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「あー!!」
びっくりして謙也さんからもらったアーモンドチョコを落としそうになった。
隣の席の女子がこっちを指差す。いてこますぞ貴様。
「財前危険やで!」
「なにが」
「アーモンドチョコは逃げるんやで!」
「はぁ?」
頭に虫でもわいとるんかと女を見つめる。女は真面目な顔。なんやのコイツ。
「しっかり大事に抱え込んどかんとな、アーモンドチョコは逃げるんや!!」
「だから、なんでやねん」
「まぁ、例え話なんやけど…。もしもコンビニでアーモンドチョコ買ったとするやん?」
ニッコニコと笑いつつ話し出す女。ホンマ、あほやとため息をつきつつも俺は優しいから話を聞く。
「でなぁ、車でさ、おとんかおかんが急発進したら逃げるで!!」
「それ転がるだけやろ」
「逃げとるやん!!しかも空中でとれへんねんで!あの形!」
んなこと熱演せんくてええし。
「だから、財前も気ぃつけぇや」
「……も?」
じゃーねー、と言って去っていく女。
意味がわからんかったんやけど。車に乗らなきゃいい話とちゃうの?も、ってお前もやったんか。
俺は一つだけため息をついた。