―――過去■□―― ぼくが初めて見た世界は、緑色のフィルターがかった世界だった。 うっすらと目を開けたぼくの眼球にしみわたるように何かの液体が触れる。ぼくは再び目を閉じた。 耳元ではごぼごぼとやかましい気泡音が断続的に聞こえた。 指を動かしてみた。ピクッと中指が動いた。全身の皮膚が液体を感じていた。そして体の所々に針が刺さっているような、そんな感じがする。 むずがゆくて針を取ろうともがいてみた。でも、うまくバランスが取れなくて頭が透明な壁に当りドン、と鈍い音がした。 ぼくはうめきながら目を開けた。さっきと違って、今度は周りがよく見えた。 薄暗い場所だ。白い着物を着た人が何人か見える。 そのうち、近くにいた何人かが音のした方向をみた。液体ごしの顔だったのでゆらゆらとしか見えなかったが、多分ぼくを見て驚いたのだろう。その人たちがぼくのそばに走ってきた。 三人その人たちは、ぼくのことをしばらくなんとも言えない表情で見て 一人が持っていた白いものをはさんである板に何かを書きはじめ、一人がどこかに行き、一人がぼくの足元の機会をいじった。 ぼくはその様子を、透明な壁に両手をあてながら食い入るように見ていた。 残った二人がずっと同じ作業をしているので、ぼくは少し飽きてしまってさらに周りの様子を見た。ぼくはカプセルのような、緑の液体に満たされた円柱の中にいた。 ぼくの体にはよくわからない管みたいなのがあちこちに刺さっていて、上とか下とかに向かって伸びていた。 ぼくのカプセルの周りには似たようなのもがいくつか見えたけど、中身はよく見えなかった。中身を見ようと顔をぎりぎりまで透明な壁に近づけようとしたとき、突然胸のあたりが苦しくなった!! 思わずのど元を抑えて、大きな気泡を口から出した。 |