幸運な少女のことを、
「まるで神に愛されているようだ」という意味で、
“神の愛娘(まなむすめ)”と呼ぶ。
今ここに、千年の時を越え、
転生した唯一無二の存在がいる。
妖艶な気で妖怪を魅了し、
寄せ付けてしまう特異体質。
その稀なる魂の持ち主は、
幾度生まれ変わっても、
“妖(あやかし)の愛娘(まなむすめ)”と呼ばれた──。
華の香薫る水の瀬で、
月が静かに語りまする。
暁待てぬこの想い、
宵の空にうらうらと。
炎の追憶、
夢幻の淵より目醒めし傷痕、
緋い花の雨のしずく達、
産声よりもいざ早く、
貴方に出会った悪戯よ。
恋しや遙か、辿りだす。
花舞う空に浮かぶ雲、
夢馳せるはその彼方。
美装なその身、
月に喰らわせ、末は風に追わせるか。
妖の愛娘、その娘。
汝の名を呼ぶ声を聴け。