Dream
□無限ループは幸せの象徴
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駅の階段で転けるのは当たり前。道端でつまづくのはほぼ毎日。視聴者プレゼントみたいなのは当たったことないし、カフェでグラスを割っちゃったりする。
「要するに、私は運がないんですよ」
『何だ急に』
快晴の昼下がり。だだっ広いマンションのリビングで、大の字に寝転ぶ私とセルティ。
「運ってなんだろう?」
ぐっとセルティは伸びをして起き上がり携帯を取り出す。少し文字を打って携帯の画面を見せてきた。
『運って言うのは、』
「運って言うのは?」
答えてくれるんかい。驚きとちょっとのワクワクが生まれ、勢いよく飛び起きる。
が、早く聞きたい私とはよそになかなか言葉を続けないセルティ。少し考えて文字を何時もよりゆっくり打っていく。
『ある意味、運命と変わりないんじゃないかな?』
「運命…?」
『名無しさんに起こることはすべて決められてるってこと』
「うーん。じゃあ運命も最悪かぁ…運命ってなんだろう」
『無限ループする気か』
携帯をしまい、また横になったセルティ。結局わたしの運の悪さは運命かチクショウ。
でもまあこうしてゆっくりできるのはとても良い。
そう思って私ももう一度横になる。
…床が床じゃない。
てか、普通仰向けに寝たら天井が見えるはず。なのにどうして新羅の顔?
「でも、名無しさんが僕、いや、僕たちに出会えたのも運命なら、それは最高だったね」
「……」
「光陰矢の如し。嫌な運命もすぐさま過ぎ去っていくさ」
はいそうですね。俗に言う膝枕とか言うやつですねええ。
と言うかよく膝枕できたな…
「新羅、何やってん『…おおおお前、名無しさん…名無しさんにひ膝枕するなをつ、どうなってをかかわは』
激しい動揺から文字もまともに打てず、新羅を殴ることもセルティはできてない。
「セルティ落ち着いて!私は新羅なんて眼中にないから!」
「ひどいなあ名無しさん!僕はまんざらでもないいっひぇっ!」
両腕を伸ばしてぎゅうっと頬をつねってやる。ざまあみろ!
「新羅とセルティは恋人同士なんだから、私なんかに構わなくてよし」
そう言って手を離すと嬉しそうに笑った新羅。セルティも影をポワポワと出して照れたそぶりをした。
『って端から見たら新羅と名無しさんが恋人同士みたいじゃないか!
「僕はまんざらでもないぐはっ!」
私の顔のすぐ上をセルティのストレートなパンチが通過する。新羅のお腹にクリーンヒット。
『結局お前は私と名無しさんの』
まで打って指を止めた。
「セルティと名無しさんの〜?」
『いや、やっぱいい』
「ちょ、セルティ!何が言いたいかはだいたいわかるけど、口にしてくれないなんてどんなじらしプレイ?」
『黙れ!黙れ黙れ黙れ!』
「(ま、平和なら運が悪くても何でもいいや)」
ごく当たり前で、
ちょっと変わった
3人のありふれた
無限ループの毎日
無限ループは幸せの象徴
(って、私はいつまで膝枕されてればいいの?)
(永遠にでも僕は構わない)
(……)
(大丈夫!セルティはベッドの中で永遠にぶはっ!!)
(名無しさんの前では止めろっ!)