Dream

□初めて名前で呼ばれたことが、全てを物語って
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自殺行為。人は今からする私の行動をそう言う。たぶん、端から見たらそう見える……のかもしれない。私も全くそう思わない訳ではない。と言うか、自殺行為って。みんなひどいと思う。
朝一番に教室に来て彼の机に入れた小さな紙切れ。「今日の放課後、少し時間を下さい。屋上で待ってます」なんてどこぞのベタな少女マンガ。紙に気づいた時のあの彼の顔、行動。すっごい怪しかった。さすがのあの彼でも、この文の意味が分かったみたい。授業中は何回も時計を見るし、思い詰めた顔をしてると思ったら急に首を横に振ったり。

あれか、断り方でも考えてるのか。

そんな私もそわそわそわそわ。
そして屋上うぃる(うぃるとか初めて使った)。



「名無しさんちゃん!本当に気をつけなよ!」



「新羅くん……私がぐちゃぐちゃになっても、ちゃんと治してね」



「うん、じゃなくて、そんなおぞましい…」



気をつけてよって、笑顔で私を送り出す。ニヘラと笑う彼の友達の顔を見たら何故だか安心してきた。

一歩一歩屋上へと続く階段を踏みしめる。いつもより重く感じる屋上のドアを開ける。



「静雄くん、」



広い屋上には思い人の彼が1人。学ランを着こなした金髪で長身が原因で、少し(嘘、かなり)怖く見える。力も強くて、なかなかみんな近づけない。近づこうとしない。けど私は、好きになった。理由をよく聞かれるけど理由なんてない。
好になったもんは好き、だ。



「ごめんね、急に」



小走りで駆けよると視線を落としてポリポリと頭をかいた。どこか居心地が悪そう。



「いや、別に…」



まだ、視線は落としたままだ。



「……あのね、単刀直入に聞くけど」



人は無謀だとも言う。
確かに無謀だと思う。
それでも私は踏み出した。



「好き、って言ったら…迷惑…かな、って、ちょちょ、静雄くん?」



ああ、告白って遮られるものなのね。ってばかげたことを思った直後。視界に映るのは彼の制服、嗅覚を満たすのは彼の香り。



「一生、離さないって言ったら…迷惑、か?」



頭にかかる彼の吐息、耳に流れ込む彼の低い声。



「迷惑なわけないじゃん、静雄…」





大好きな彼は、壊れないように私をそっとぎゅっと抱きしめた。






初めて名前で呼ばれたことが、全てを物語って



(シズちゃん顔真っ赤。そりゃそうだよね。毎日毎日名無しさんちゃんのこと目で追ってるし、新羅にも相談してたみたいだしねぇ。単細胞でも恋とかできるんだ(いぃぃざぁぁぁやぁぁ!)…っと、やだなー、シズちゃん。落ち着いてよ)
 

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